T27-7 夢を夢見る者


Mishaps are like knives, that either serve us or cut us, as we grasp them by the blade or the handle.
不幸な出来事はナイフのようなものだ。私たちが刃をつかむか柄をつかむかに応じて、私たちを傷つけもすれば助けもする。

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James Russell Lowell
ジェームズ・ラッセル・ローウェル





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今回は、テキストから「夢を夢見る者」(第二十七章 VII. The Dreamer of the Dream )をご紹介します。


この世界が夢だとしたら

本節と次節は、コースの世界認識(=自己認識)を理解するうえできわめて重要な事柄を述べています。

このテーマを理解する際のポイントは、私たちが夜見る夢に出てくる世界をそのままこの世界とパラレルにスライドさせて考えてみることです。

本節では、夜の夢見の状態との対比によって、実は同じように夢であるこの世界という舞台で私たちの本質である狂った神の子が私たち個々の生き物になりきって壮大な一人芝居を演じていることが示されます。


夢見る者が悪夢に苦悩する仕組み

自分が罰を受けている夢を見ている者は、自分を攻撃している敵を作り出しているのが自分自身だと気づいていないので、自分が不当にも自分以外の存在によって攻撃されていると思いこんでいます。

夢見る者は、夢の主人公となるキャラクターだけが自分で、夢の世界やそこに出てくる登場人物たちは自分の外側に存在すると思っているので、自分は、自分を攻撃する敵や自分に害悪をもたらす外の世界によって犠牲になる被害者なのであって、外部の敵や世界からもたらされる害悪について自分が責任を問われる筋合いはないと信じて疑いません。

夢見る者は、自分が夢の世界を渡り歩くために操縦する主人公だけが自分だと思っていて、その主人公の観点からしか見ることができないので、その主人公が外部の敵や世界からされたことだけを認識していて、主人公以外の敵や世界は自分とは無関係で、実は自分が敵や世界を生み出して主人公を攻撃させているのだとは認識していないので、夢見る者の認識している狭い了見からすれば、自分は潔白で敵や世界が邪悪で罪深いという認識は正しいということになります。

それでも、夢の世界は夢見る者が作り出しているがゆえに、どんな夢を見るかは彼次第なのだから、彼が苦悩しているとすれば、そのこと自体、彼が自分で自分を攻撃しているという事実を物語っています。

しかし、夢見状態で主人公に自己同一化しているために、彼は苦しみの源が自分自身の外側にあるとみなしてしまうために、彼は苦しみから逃れられなくなっています。


夢の主人公に自己同一化しきっている夢見る者には自分で自分を苦しませていることがわからない

⒎「Whatever cause they have is something quite apart from him, and what he sees is separate from his mind.
 そうした幻想にどんな原因があるにせよ、それは彼とはまったく隔絶した別の何かであり、彼が見ているものは彼の心とは無関係だというのです。

 He cannot doubt his dreams' reality, because he does not see the part he plays in making them and making them seem real.
 彼には、自分の夢が現実かどうか疑うことができません。なぜなら、彼には、そんな夢を作り出し、その夢を本物のように見せかける上で自分が役割を果たしていることがわかっていないからです。」


自分は外部の他者や世界に翻弄される被害者だと信じる状態を夢に置き換えるなら、それは、自分が夢見る者ではなく、誰かが見る夢の一登場人物が自分だと信じる状態

もし夢見る者が自己同一化している主人公が、当の夢の主人公が思っている通り、夢見る者とは別の存在だとしたら、その主人公は別の誰かの見ている夢の中に出てくる一登場人物でしかなく、夢の世界の犠牲者のまま、夢の世界を生み出している別の心が好き勝手に割り当ててくる取るに足らない役割を演ずる夢の中の一登場人物である影法師でしかなくなります。

自分は世界や敵の犠牲者だと信じているとき、私たちは、この解釈を受け入れていることになります。

夢の世界にどっぷり浸かりきっている私たちには、この解釈がしっくりくる、というよりも、この解釈以外は思いもよりません。


夜見る夢の仕組みをこの世界にスライドさせる

これに対して、もうひとつのありうる解釈は、夜の夢と同じ仕組みをスライドさせる発想です。

すなわち、夢の世界と同じように、私たちは夢の主人公が自分だと思い込んでいるだけで、夢見る者が主人公だけでなく、ほかの登場人物も世界という舞台装置も作り出しているというものです。

「13. You are the dreamer of the world of dreams.
 あなたこそが、多様な夢の世界を夢見ている張本人です。

 No other cause it has, nor ever will.
 あなたが夢を見ていること以外に、この世界の原因はないし、これからもありえません。」





私たちは誰かに夢見られている夢の登場人物なのか、それとも、夢の主人公に自己同一化している夢見る者=神の子なのか

本節は、この世界を夢として捉えるとした場合、私たちは誰かの見る夢の中の登場人物であるという解釈と、夢見る者が世界や他者や主人公を作り出しているという解釈を対立するもののように表現しています。

前者は常識的な世界観、つまり、客観的に実在する世界に両親から生み出された人間という生物が自分であり、世界によって生み出され、いっときだけ世界からもてなしを受けて死によって世界を去る存在が自分だという観点です。

後者は、実在しない神の子の妄想の生み出した幻想世界の中を体験するためのアバターが私たち人間だという観点であり、夢の主人公も他者という登場人物たちも世界そのものもすべて神の子が生み出した夢だという見方です。


このふたつの解釈は実在と実在の不在であり、真の対立とは言えない

たしかに夢の主人公に自己同一化していた夢見る者の意識は、そのままエゴに同一化したままでいる解釈を続けることもできるし、自分だと思っていた主人公は本当の自分ではなく本当の自分は夢見る者としての神の子だと正しく解釈することもできるという選択肢があるという意味ではふたつの解釈は対立しています。

しかし、実際の構造としては、両者は同等の実在性を持つ選択肢ではなく、ほかのところでいつも出てくる、天国と地獄、聖霊とエゴ、実在と実在の不在との間の選択肢と同じで、あるように見えている幻想つまり無と本当にある有との間の選択でしかありません。


神の子が夢の世界の中の夢の主人公だけにアイデンティティーを抱き、世界=他者を自分の外に見る錯覚が神の子を自分以外の存在にする

夢見る者である神の子が世界や他者や主人公を作り出して、その中の主人公だけに自己同一化するという夢見の第一段階を過ぎると、主人公になりきった夢見る者は、主人公の限られた知覚を通しての視野狭窄を介してしかものが見えなくなるので、世界が自分の外部にあると認識し、世界の中に主人公と同等の働きをするアバターとしての他者を認識するので、自分が夢見る者であるという自覚を喪失し、自分は自分とは分離した世界や他者に翻弄されるアバターだと信じます。

つまり、夢見る者である神の子は夢の主人公であるエゴ・身体になりきることで、自分が神の子であるという自覚を失い、主人公である人の子にとって夢見る者である神の子は自分以外の存在、ほかの誰かになるということです。


架空の存在のアバターのほうが自分は実在する本物だと信じ、実在する存在のはずの夢見る者は自分を忘れ去り、どちらも自分が誰だか見失ってしまう

これは、夢見る者にとって夢の世界を体験するための視点となる主人公は夢の世界の登場人物のひとつでしかないとみなすことであり、自分は自分ではないものによって翻弄されうる存在だという世界観となります。

私たちは実際に、自分の外に確固とした世界があり、自分とは別の他者がいて、自分たちは敵となる他者や世界によって災難にさらされる人間だと信じているので、自分のことを夢の中の主人公だとみなしているわけです。

世界が夢であるとしたら、夢とはそういうものなので、このような自己認識を持つのはむしろ当然なわけですが、客観的には、これがきわめて不合理な自己認識であることは明らかでしょう。

夢見る者のほうは本当の自分を忘れ去り、夢見る者が自己同一化した先のアバターのほうは、本当は物語の世界の架空の登場人物でしかないのに、自分は実在する本物だと信じ込んでいるわけですから、本物のほうも偽物のほうも勘違いして自分を見失っているわけです。


この世界の中に居ながら世界が夢か現実か判定する手立てはない→どちらと見るか仮に態度決定することが必要

けれど、私たちは、映画インセプションの「トーテム」(他人の夢の中にいるのか現実なのかを見分ける道具。主人公コブのトーテムは独楽(こま))のような道具を持たないので、私たちには、世界の中に居ながらにして世界は夢なのか現実なのか、つまり、自分が架空のキャラクターなのか本当に実在する存在なのか確認する術はありません。

ですから、世界の中に居ながらにして世界が夢なのか現実なのか検証しようとすることは無意味であり、ここに努力を注ぐと徒労に終わります。

少なくとも、夜見る夢に出てくる世界の中で、自分だと思う自分と他者が出てきて自分以外の他者や世界は自分とは別の存在だと疑いもしなかったのに、夢が覚めたら、夢の中に登場していた夢の主人公であった自分だけでなく主人公ではない他の登場人物としての他者や環境などの夢の世界全体という舞台そのものも自分が作り出していたことに気づくという仕組みがこの世界にもパラレルにあてはまりうることは、世界が夢である可能性を十分示唆しているといえます。

夢が夢だったことは、夢が覚めてみればわかることなので、目指すなら夢から覚めることに目標を設定すべきです。


夢から目覚めることを目指すなら、世界は夢だという仮定に乗っかるべき

そうなると、世界という夢から覚めるには、まず世界を夢とみなさなければ話は始まらないので、必然的に、世界が夢か現実かという問題に関しては、世界が夢だという仮定に乗っかるべしということになります。

世界が夢だと仮定するなら、上記の理屈で、自分だと思っている人間は架空の存在で、夢見る者である本当の自分としての神の子が別にいるはずです(もちろん、夢見る者が一者ではなくたくさんの分離した夢見の主体のいる夢から覚めた先の現実を想定することも可能ですが、夢から覚めた先の現実が天国か分離世界かということを夢の中にいながら解明しようとすることが無駄なのは世界が夢なのか現実なのか検証しようとすることが無意味なのと同じです。)。


そうだとすれば、私たちが自分だと思っている人間は、神の子にとっての牢獄ということになる

つまり、自分だと思っている人間は、本当の自分である神の子を閉じ込める幽閉装置だということです。

自分が世界を夢見ていることを忘れて、自分以外の誰かの見る夢の一登場人物が自分なのだと信じ込んで夢の中に幽閉された状態から脱するには、自他分離の錯覚を維持する犠牲者としての夢を見るのをやめて、聖霊に幸せな夢を見せてもらうようになることが必要です。

それには、兄弟の罪や過ちをしつこく夢見てなどいないで、兄弟の思いやりや慈悲を夢見て、兄弟の罪を赦して、兄弟を救い主として遇して感謝を捧げることが必須です。


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テキスト第二十七章 

VII. The Dreamer of the Dream
七 夢を夢見る者



1. Suffering is an emphasis upon all that the world has done to injure you.
 苦悩することは、世界があなたを傷つけようとして行ってきたことすべてを真に受けることです。

 Here is the world's demented version of salvation clearly shown.
 ここに、救済に関するこの世界の狂った解釈はっきり表れています。

 Like to a dream of punishment, in which the dreamer is unconscious of what brought on the attack against himself, he sees himself attacked unjustly and by something not himself.
 その狂気は、罰を受けている夢の中で、夢を見ている者は自分に攻撃をもたらしているのが自分自身だと気づいていないので、彼は自分が不当にも自分ではないほかの何かによって攻撃されていると思いこんでいる状態に似ています。

 He is the victim of this "something else," a thing outside himself, for which he has no reason to be held responsible.
 彼はこの「ほかの何か」、彼自身の外側にあるものの被害者なのであって、自分への攻撃についての責任を彼が問われるいわれは一切ないということになります。

 He must be innocent because he knows not what he does, but what is done to him.
 彼は、自分がしていることを知らず、自分にされたことだけ知っているので、彼からすれば、自分は潔白に違いないというわけです。

 Yet is his own attack upon himself apparent still, for it is he who bears the suffering.
 それでも、苦しみを味わっているのはまさしく彼なのだから、彼が自分で自分を攻撃しているのは依然として明らかです。

 And he cannot escape because its source is seen outside himself.
 そして、彼が苦しみから逃れられないのは、彼が苦しみの源が自分自身の外側にあるとみなしているせいです。



2. Now you are being shown you can escape.
 今、あなたは、自分がこの夢見の状態から脱出できるという事実を突きつけられているのです。

 All that is needed is you look upon the problem as it is, and not the way that you have set it up.
 必要なことは、あなたが問題をありのままに見ることだけであって、自分で仕立て上げた通りに見ることではありません。

 How could there be another way to solve a problem that is very simple, but has been obscured by heavy clouds of complication, which were made to keep the problem unresolved?
 問題そのものはきわめて単純であるものの、その問題を未解決のままにしておくために作り出された複雑さの厚い雲によって不明瞭にされているのだとすれば、そんな問題を解決するには、問題をありのままに見るしか方法はないはずです。

 Without the clouds the problem will emerge in all its primitive simplicity.
 そんな雲がなければ、その問題はその幼稚なほど素朴で単純な姿を現すでしょう。

 The choice will not be difficult, because the problem is absurd when clearly seen.
 そうなれば、選択は難しくはないでしょう。なぜなら、はっきり見てみれば、その問題が実に馬鹿げたものだとわかるからです。

 No one has difficulty making up his mind to let a simple problem be resolved if it is seen as hurting him, and also very easily removed.
 誰にとっても、もし単純な問題が自分を傷つけているのであり、それをいとも簡単に取り除くことができるのだとわかれば、その問題を解決させようと決心するのは難しいことではありません。

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3. The "reasoning" by which the world is made, on which it rests, by which it is maintained, is simply this:
 この世界を作り、世界の基盤となり、世界を維持している「論理」を簡単に言えば次のようになります。

 "You are the cause of what I do.
 それは、「私がすることの原因はあなたである。

 Your presence justifies my wrath, and you exist and think apart from me.
 あなたの存在が私の憤怒が正しいことを証明し、あなたは私と離れて存在して、私とは別々に思考する。

 While you attack I must be innocent.
 あなたが攻撃してくるのだから、私は潔白であるに違いない。

 And what I suffer from is your attack."
 そして、私を苦しめているのは、あなたの攻撃なのだ。」というものです。

 No one who looks upon this "reasoning" exactly as it is could fail to see it does not follow and it makes no sense.
 こんな「論理」を正確にありのまま見てみるなら、その論理は筋が通っていないし、それがまったく意味をなさないものだとわからない者はひとりもいないはずです。

 Yet it seems sensible, because it looks as if the world were hurting you.
 ところが、こんな「論理」が道理に適っているように思えてしまうのです。その理由は、まるでこの世界があなたを傷つけているかのように思えるからです。

 And so it seems as if there is no need to go beyond the obvious in terms of cause.
 そのせいで、明らかに原因であるように見えているものを、さらに踏み越えて見てみる必要までは存在しないように思えてしまうのです。



4. There is indeed a need.
 しかし、実は必要ないどころか、むしろ必要なのです。

 The world's escape from condemnation is a need which those within the world are joined in sharing.
 この世界を有罪判決から解放することが、この世界の中にいる者たちがみんなが共通して持っている必要性です。

 Yet they do not recognize their common need.
 しかし、彼らは、自分たちが共通の必要性を持っていることに気づいていません。

 For each one thinks that if he does his part, the condemnation of the world will rest on him.
 というのは、誰もが、もし彼が自分の役割を果たすなら、この世界の有罪の宣告が自分に対して向けられてしまうはずだと思っているからです。

 And it is this that he perceives to be his part in its deliverance.
 だから、誰もがこの世界の解放のための自分の役目は、世界の咎めを受けることだと知覚しているのです。

 Vengeance must have a focus.
 復讐には、必ず標的となる相手がいなければなりません。

 Otherwise is the avenger's knife in his own hand, and pointed to himself.
 復讐の的となる相手がいなければ、復讐者が手にしているナイフが彼自身に向けられることになってしまうからです。

 And he must see it in another's hand, if he would be a victim of attack he did not choose.
 だから、彼が自分の選択しなかった攻撃の犠牲者であろうとするなら、彼はそのナイフがほかの者の手に握られているのを見なければならなくなります。

 And thus he suffers from the wounds a knife he does not hold has made upon himself.
 こうして、彼は、自分が握っていないナイフが自分につけた傷によって苦しむことになるのです。

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5. This is the purpose of the world he sees.
 こんな自己欺瞞が、彼がこの世界の目的だとみなしているものです。

 And looked at thus, the world provides the means by which this purpose seems to be fulfilled.
 そして、そのように見られることで、この世界はそんな目的が実現するように見える手段を提供することになります。

 The means attest the purpose, but are not themselves a cause.
 手段はその目的の証拠にはなっても、手段それ自体は原因にはなりません。

 Nor will the cause be changed by seeing it apart from its effects.
 また、その原因をその結果とは別のところに見たところで、原因そのものが変わるわけではありません。

 The cause produces the effects, which then bear witness to the cause, and not themselves.
 原因は結果を生み出します。それによって、結果は、その原因を証明しますが、結果自体を証明するわけではありません。

 Look, then, beyond effects.
 ですから、結果の奥に目を向けてください。

 It is not here the cause of suffering and sin must lie.
 苦しみや罪という結果の中に苦しみや罪の原因があるはずがありません。

 And dwell not on the suffering and sin, for they are but reflections of their cause.
 だから、苦しみや罪のことばかり考えているのはやめなさい。なぜなら、苦しみや罪はそれらの原因を反映するものでしかないからです。



6. The part you play in salvaging the world from condemnation is your own escape.
 この世界を罪の宣告から救出するためにあなたが果たすべき役割は、あなた自身がそこから脱出することです。

 Forget not that the witness to the world of evil cannot speak except for what has seen a need for evil in the world.
 不幸な世界の証人は、この世界には不幸が必要だとみなしている者たちのためにしか証言できないことを忘れてはなりません。

 And this is where your guilt was first beheld.
 そして、ここが、あなたの罪悪感が最初に見られた場所なのです。

 In separation from your brother was the first attack upon yourself begun.
 あなたの兄弟から分離することによって、あなたは自分自身に対する最初の攻撃を開始したのです。

 And it is this the world bears witness to.
 そして、世界が証明しているのはこのことです。

 Seek not another cause, nor look among the mighty legions of its witnesses for its undoing.
 これとは別の原因を探そうとしてはなりません。また、無数にいる世界の証人のうちの誰かが世界を取り消してくれると期待してもなりません。

 They support its claim on your allegiance.
 これらの証人たちは、あなたが世界に忠誠を誓うべき根拠を示すだけだからです。

 What conceals the truth is not where you should look to find the truth.
 あなたが真理を見つけるつもりなら、真理を隠すものの中で真理を探すべきではありません。

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7. The witnesses to sin all stand within one little space.
 罪の証人たちはみな、ごく小さな空間に佇んでいます。

 And it is here you find the cause of your perspective on the world.
 そして、あなたはここで、世界に対するあなたの視座の基盤となる原因を見出すことができます。

 Once you were unaware of what the cause of everything the world appeared to thrust upon you, uninvited and unasked, must really be.
 かつてあなたは、自分が招いたわけでも頼んだわけでもないのに、世界が無理やり自分に押しつけてくるように思えたあらゆる物事の原因が何なのか気づいていませんでした。

 Of one thing you were sure: Of all the many causes you perceived as bringing pain and suffering to you, your guilt was not among them.
 あなたがひとつだけ確信していたのは、あなたが自分に痛みや苦しみをもたらすものとして知覚していた多くの原因の中には、自分の罪悪感だけは含まれていなかったということです。

 Nor did you in any way request them for yourself.
 しかも、あなたには、自分で痛みや苦しみを自分にもたらしてほしいと要請した覚えは少しもありません。

 This is how all illusions came about.
 このようにして、すべての幻想は生まれたのです。

 The one who makes them does not see himself as making them, and their reality does not depend on him.
 そうした幻想を作り出している張本人は、自分が幻想を作り出しているとは思いもよらないので、幻想が現実に思える原因が自分であるはずはないというのです。

 Whatever cause they have is something quite apart from him, and what he sees is separate from his mind.
 そうした幻想にどんな原因があるにせよ、それは彼とはまったく隔絶した別の何かであり、彼に見えているものは彼の心とは無関係だというのです。

 He cannot doubt his dreams' reality, because he does not see the part he plays in making them and making them seem real.
 彼には、自分の夢が現実かどうか疑うことができません。なぜなら、彼には、そんな夢を作り出し、その夢を本物のように見せかけるうえで自分が果たしている役割がわからないからです。



8. No one can waken from a dream the world is dreaming for him.
 誰にも、世界という舞台で彼という存在が夢見られている夢見の状態から目覚めることはできません。

 He becomes a part of someone else's dream.
 そのとき彼は、別の誰かの夢の一部になっているからです。

 He cannot choose to waken from a dream he did not make.
 彼には、自分が作らなかった夢から目覚める選択はできません。

 Helpless he stands, a victim to a dream conceived and cherished by a separate mind.
 彼は別の心が想像して大切にしている夢の犠牲者になったまま、何もできずに立ち尽くします。

 Careless indeed of him this mind must be, as thoughtless of his peace and happiness as is the weather or the time of day.
 しかし、その別の心は彼のことなどまったく気にも留めていないに違いなく、彼の平安や幸福など、その日の天候や時刻ほどにも気にかけていないはずです。

 It loves him not, but casts him as it will in any role that satisfies its dream.
 その別の心は彼を愛してなどいませんが、自分の夢を満足させるためであれば、自分勝手に彼にどんな役割でも割り当ててきます。

 So little is his worth that he is but a dancing shadow, leaping up and down according to a senseless plot conceived within the idle dreaming of the world.
 彼の価値はまったく取るに足らないものであるため、彼は、世界という空虚な夢の中で想像された無意味な筋書きに従って跳ね回って踊るひとつの影法師にすぎません。

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9. This is the only picture you can see; the one alternative that you can choose, the other possibility of cause, if you be not the dreamer of your dreams.
 もしあなたが自分の夢を夢見ている本人でないとした場合に、あなたが選ぶことができ、夢の原因として想定できるもうひとつの選択肢はこれしかありません。これだけが、あなたが見ることができる唯一の絵です。

 And this is what you choose if you deny the cause of suffering is in your mind.
 だから、もしあなたが苦しみの原因が自分の心の中にあることを否認するなら、そのときあなたはこの選択肢のほうを選んでいるのです。

 Be glad indeed it is, for thus are you the one decider of your destiny in time.
 本当に、苦しみの原因が自分の心の中にあることを喜ぶがよいでしょう。なぜなら、あなたの心の中に苦しみの原因があってこそ、時間の中で自分の運命を決定できる唯一の存在はあなただけだということになるからです。

 The choice is yours to make between a sleeping death and dreams of evil or a happy wakening and joy of life.
 死の眠りの中で不幸な夢を見るのか、それとも幸せに目覚めて生命の歓喜を味わうのか、それを選ぶのはあなた次第なのです。



10. What could you choose between but life or death, waking or sleeping, peace or war, your dreams or your reality?
 あなたに選ぶことができるのは、生命か死か、目覚めか眠りか、平和か戦争か、あなたの夢かそれともあなたの現実か、これらのうちのどちらか一方だけです。

 There is a risk of thinking death is peace, because the world equates the body with the Self Which God created.
 この世界では、身体は神が創造した大いなる自己に等しいものとみなされているので、死こそ平安だと考えてしまう危険があります。

 Yet a thing can never be its opposite.
 しかし、あるものが、それ自体の対極のものになることは決してできません。

 And death is opposite to peace, because it is the opposite of life.
 そして、死は生命の反対なので、死は平安とは対極にあるものです。

 And life is peace.
 だから、生命こそが平安なのです。

 Awaken and forget all thoughts of death, and you will find you have the peace of God.
 目を覚まして死についての思いをすべて忘れ去りなさい。そうすれば、あなたにも自分が神の平安を持っているとわかるはずです。

 Yet if the choice is really given you, then you must see the causes of the things you choose between exactly as they are and where they are.
 しかし、もし実際に選択する機会があなたに与えられているなら、あなたは自分が選ぼうとするふたつのものの原因を正確にあるがままに、そして、それらが現にある場所に見なければなりません。

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11. What choices can be made between two states, but one of which is clearly recognized?
 ふたつの状態のうちの片方しかはっきり認識できないとしたら、どのような選択ができるというのでしょうか。

 Who could be free to choose between effects, when only one is seen as up to him?
 ふたつの結果のうちの一方だけが自分に選べるように見えるとしたら、誰が自由にそのふたつの結果の中から選べるでしょうか。

 An honest choice could never be perceived as one in which the choice is split between a tiny you and an enormous world, with different dreams about the truth in you.
 本物の選択肢が、あなたの内なる真理についてそれぞれに異なった夢を抱く卑小なあなたと巨大な世界との間で二分された選択肢として知覚されるようなことは絶対にありえません。

 The gap between reality and dreams lies not between the dreaming of the world and what you dream in secret.
 現実と夢との裂け目は、世界という夢とあなたが自分だけで密かに見る夢との間にあるわけではありません。

 They are one.
 両者はひとつのものだからです。

 The dreaming of the world is but a part of your own dream you gave away, and saw as if it were its start and ending, both.
 世界という夢は、単にあなたが自分独自の夢の一部を引き渡して、まるでその夢の一部が世界の始まりと終わりの両方であるかのようにみなしたものでしかありません。

 Yet was it started by your secret dream, which you do not perceive although it caused the part you see and do not doubt is real.
 しかし、それはあなたが密かに見る夢から始まったのです。あなたはその密かな夢のことを知覚してはいませんが、その密かな夢があなたが目にして本物であることを疑いもしない部分を生み出したのです。

 How could you doubt it while you lie asleep, and dream in secret that its cause is real? 
 あなたは眠りこけていて、自分の見ている世界の基盤は実在するという夢を自分ひとりで見ているというのに、どうしてそのあなたに世界の実在性を疑うことができるでしょうか。



12. A brother separated from yourself, an ancient enemy, a murderer who stalks you in the night and plots your death, yet plans that it be lingering and slow; of this you dream.
 あなた自身から分離した兄弟は、古来の仇敵であり、闇の中で忍び寄ってきてあなたを殺そうと企み、しかも、その死を長引かせて緩慢な死をもたらそうと計画している殺人者だと、あなたは夢見ています。

 Yet underneath this dream is yet another, in which you become the murderer, the secret enemy, the scavenger and the destroyer of your brother and the world alike.
 ところが、この夢の裏側にはさらに別の夢があり、その夢の中では、あなたのほうが殺人者で、秘密の敵であり、兄弟や世界を同じように破滅させようと死骸を漁る獣になっています。

 Here is the cause of suffering, the space between your little dreams and your reality.
 ここに苦しみの原因があります。それは、あなたの卑小な夢の数々とあなたの現実との間の空間です。

 The little gap you do not even see, the birthplace of illusions and of fear, the time of terror and of ancient hate, the instant of disaster, all are here.
 あなたにはほとんど見えないようなこのわずかな隙間は、幻想と恐れの揺籃の地であり、恐怖や古来の憎しみ、大惨事の瞬間を宿す時であり、それらすべてがここにあります。

 Here is the cause of unreality.
 ここに虚構の原因があります。

 And it is here that it will be undone.
 そして、それらが取り消されることになるのも、ここにおいてなのです。

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13. You are the dreamer of the world of dreams.
 あなたこそが、多様な夢の世界を夢見ている張本人です。

 No other cause it has, nor ever will.
 あなたが夢を見ていること以外に、この世界の原因はないし、これからもありえません。

 Nothing more fearful than an idle dream has terrified God's Son, and made him think that he has lost his innocence, denied his Father, and made war upon himself.
 恐ろしいものであるはずもない空疎な夢が、神の子を恐怖に陥れて、自分は潔白さを失ってしまったと思いこませ、自らの大いなる父を否認して、自分自身に対して戦いを挑ませてきたのです。

 So fearful is the dream, so seeming real, he could not waken to reality without the sweat of terror and a scream of mortal fear, unless a gentler dream preceded his awaking, and allowed his calmer mind to welcome, not to fear, the Voice That calls with love to waken him; a gentler dream, in which his suffering was healed and where his brother was his friend.
 そんな夢があまりにも恐ろしく、実にリアルに見えるので、彼は現実に目覚めようにも、恐怖のあまり冷や汗をかいたり、死の恐怖で叫び声をあげずにはいられず、目を覚ますことができません。もっとも、目覚めに先立って、より穏やかな夢を見て、彼の穏やかなほうの心に、目覚めるようにと愛をこめて呼びかける大いなる声を恐れずに喜んで迎えるようにさせることができれば話は別です。その穏やかな夢の中では、彼の苦しみは癒されているし、彼の兄弟は彼の味方だからです。

 God willed he waken gently and with joy, and gave him means to waken without fear.
 神は彼が穏やかに喜んで目を覚ますことを意図して、恐れずに目覚めるための手段を彼に授けてくれたのです。



14. Accept the dream He gave instead of yours.
 あなたの夢の代わりに、神が授けてくれた夢を受け入れてください。

 It is not difficult to change a dream when once the dreamer has been recognized.
 ひとたび夢を見ているのが誰なのか気づきさえすれば、夢を変えるのは難しいことではありません。

 Rest in the Holy Spirit, and allow His gentle dreams to take the place of those you dreamed in terror and in fear of death.
 聖霊の中に安らぎ、聖霊に、あなたが死の恐怖に恐れ慄きながら見ていた夢を聖霊の優しい夢に置き換えてもらってください。

 He brings forgiving dreams, in which the choice is not who is the murderer and who shall be the victim.
 聖霊は赦しの夢をもたらしてくれます。その夢の中での選択肢は、誰が殺人者となり、誰が被害者になるかというようなことではありません。

 In the dreams He brings there is no murder and there is no death.
 聖霊がもたらす夢の中には殺人も死も存在しないからです。

 The dream of guilt is fading from your sight, although your eyes are closed.
 あなたの目は閉じたままですが、罪悪感の夢はだんだん見えなくなってゆきます。

 A smile has come to lighten up your sleeping face.
 あなたの寝顔には笑みが明るく浮かんでいます。

 The sleep is peaceful now, for these are happy dreams.
 その眠りは、いまや平安そのものです。それというのも、聖霊が幸せな夢をもたらしてくれたからです。

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15. Dream softly of your sinless brother, who unites with you in holy innocence.
 神聖な清らかさの中で、あなたとひとつに結ばれているあなたの罪のない兄弟を、静かに夢見てください。

 And from this dream the Lord of Heaven will Himself awaken His beloved Son.
 そして、この夢からなら、天国の主自らが最愛の子を目覚めさせてくれるでしょう。

 Dream of your brother's kindnesses instead of dwelling in your dreams on his mistakes.
 自分の兄弟の過ちをしつこく夢見てなどいないで、その代わりに、兄弟から受けたさまざまな親切を夢見るがよいでしょう。

 Select his thoughtfulness to dream about instead of counting up the hurts he gave.
 兄弟に与えられた傷を数えあげてなどいないで、その代わりに、彼の思いやりを夢見ることを選びなさい。

 Forgive him his illusions, and give thanks to him for all the helpfulness he gave.
 彼が錯覚している幻想について彼を赦し、彼が与えてくれたさまざまな助けに対して彼に感謝を捧げてください。

 And do not brush aside his many gifts because he is not perfect in your dreams.
 そして、あなたの夢の中で彼が完璧ではないからといって、彼からのさまざまな贈り物を払いのけたりしないでください。

 He represents his Father, Whom you see as offering both life and death to you.
 彼は大いなる父を象徴しています。あなたには、その父なる神が生と死の両方をあなたに差し出しているように見えています。



16. Brother, He gives but life.
 兄弟よ、神が与えてくれるのは、ただ生命だけです。

 Yet what you see as gifts your brother offers represent the gifts you dream your Father gives to you.
 しかし、兄弟の差し出す贈り物としてあなたが何を見るかが、父なる神が自分に授けるとあなたが夢見る贈り物を決めることになります。

 Let all your brother's gifts be seen in light of charity and kindness offered you.
 兄弟からあなたへの贈り物のすべてを、あなたに差し出された思いやりや親切の光の中で見てください。

 And let no pain disturb your dream of deep appreciation for his gifts to you.
 そして、彼からあなたへの贈り物に対して深く感謝しているというあなたの夢を、どんな苦痛にも邪魔させないでください。


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