T8-9 癒しとは知覚を修正して心の完全性を回復すること
反逆とは、思いがけずやってくるものだ。もしおまえが自分の心をよく知っていれば、心はおまえに反逆することはできない。なぜならば、おまえは心の夢と望みを知り、それにどう対処すればいいか、知っているからだ。
おまえは自分の心から、決して逃げることはできない。だから、心が言わねばならないことを聞いた方がいい。そうすれば、不意の反逆を恐れずにすむ。

パウロ・コエーリョ(「アルケミスト」より)

今回は、テキスト第八章から、「修正された知覚としての癒し」という一節をご紹介します。
世界を変えようとせずに心を変えよ
そもそも分離自体が錯覚で、世界や身体が幻想なのだとしたら、癒すべき対象自体が実在しないわけで、分離を癒す、世界を救済する、病気や身体を癒すということを観念すること自体、本来、意味をなしません。
これに対して、このような錯覚を生み出すように心が機能不全を起こして間違った知覚が生じているのは確かです。
したがって、正確には、病んだ姿を見せている対象に働きかけるのではなく、必要なのは、それを見ている主体の不具合を正す知覚の修正であり、知覚が修正されることによって、それまでは外的事象としてありもしない病理状態を知覚していた状態から、本来の正常な状態をそのまま知覚する状態に戻るという仕組みです。

「As a man thinketh, so does he perceive.
人は、自らの心に思う通りに知覚します。
Therefore, seek not to change the world, but choose to change your mind about the world.
したがって、世界を変えようとするのではなく、世界についての自分の心を変えることを選択してください。
Perception is a result and not a cause.
知覚は結果であって、原因ではないからです。」 (テキスト 第二十一章 理性と知覚 序論)
よって、タイトルのとおり、癒しとは、修正された知覚だということになります。

テキスト 第八章
IX. Healing as Corrected Perception
九 修正された知覚としての癒し
1. I said before that the Holy Spirit is the Answer.
私は前に、聖霊こそが大いなる答えなのだと述べました。
He is the Answer to everything, because He knows what the answer to everything is.
聖霊はあらゆるものに対する大いなる答えです。なぜなら、聖霊は、あらゆるものに対する答えが何なのか知っているからです。
The ego does not know what a real question is, although it asks an endless number.
エゴは無数の問いを発しはしても、真の質問が何なのかわかっていません。
Yet you can learn this as you learn to question the value of the ego, and thus establish your ability to evaluate its questions.
しかし、あなたがエゴの価値を疑うことを学び、そうすることで、エゴの質問を評価する自分の能力を確立するにつれて、あなたは真の質問が何なのか学べるようになります。
When the ego tempts you to sickness do not ask the Holy Spirit to heal the body, for this would merely be to accept the ego's belief that the body is the proper aim of healing.
エゴがあなたを誘惑して病気になるように導こうとするときには、聖霊に身体を癒してほしいと頼んではなりません。なぜなら、身体の癒しを求めることは、身体は癒しの対象とするのにふさわしいというエゴの信念が正しいと認めることにしかならないからです。
Ask, rather, that the Holy Spirit teach you the right perception of the body, for perception alone can be distorted.
むしろ聖霊には、身体の正しい知覚の仕方を自分に教えてほしいと頼むとよいでしょう。なぜなら、歪曲されうるのは知覚だけだからです。
Only perception can be sick, because only perception can be wrong.
病んで正常に機能しなくなりうるのは知覚だけです。なぜなら、ただ知覚のみが間違いうるものだからです。
2. Wrong perception is the wish that things be as they are not.
間違った知覚とは、物事が今あるようではなかったらよいのにと願望することです。
The reality of everything is totally harmless, because total harmlessness is the condition of its reality.
あらゆるものの真の姿は完全に無害なものです。なぜなら、完全に無害であることは万物のありのままの状態だからです。
It is also the condition of your awareness of its reality.
完全に無害であることはまた、あなたが万物の実像に気づくための条件でもあります。
You do not have to seek reality.
あなたは現実を探し求める必要はありません。
It will seek you and find you when you meet its conditions.
あなたが現実の条件を満たすなら、現実のほうからあなたを探して見つけ出してくれるはずだからです。
Its conditions are part of what it is.
完全に無害であるという現実の条件は、現実の本質的な要素です。
And this part only is up to you.
そして、この条件を満たすことだけは、あなたにかかっています。
The rest is of itself.
それ以外は現実がやってくれます。
You need do so little because your little part is so powerful that it will bring the whole to you.
あなたがなす必要があるのは本当にわずかなことだけです。なぜなら、あなたのささやかな役割は非常に強力なので、あなたの役割が果たされさえすれば、全体があなたにもたらされるからです。
Accept, then, your little part, and let the whole be yours.
それゆえ、あなたのささやかな役割を受け入れて、全体をあなたのものとしてください。

3. Wholeness heals because it is of the mind.
全体として完全であることが心本来の属性なので、大いなる心としてひとつに結ばれることが癒しをもたらします。
All forms of sickness, even unto death, are physical expressions of the fear of awakening.
ありとあらゆる形の病は、死に至るものまで含めて、目覚めることへの恐怖が身体に発現したものです。
They are attempts to reinforce sleeping out of fear of waking.
病気は、目覚めを恐れるあまり、眠りをより深めようとする試みです。
This is a pathetic way of trying not to see by rendering the faculties for seeing ineffectual.
これは見るという能力を無力化することによって、見ないでいようとする痛ましい方法です。
"Rest in peace" is a blessing for the living, not the dead, because rest comes from waking, not from sleeping.
「安らかに休め」というのは、死者のためではなく、生きている者たちへの祝福です。なぜなら、安息は目覚めることから生じるのであって、眠りに就くことから生じるのではないからです。
Sleep is withdrawing; waking is joining.
眠ることは引きこもることであり、目覚めることはひとつに結ばれることです。
Dreams are illusions of joining, because they reflect the ego's distorted notions about what joining is.
夢はひとつに結ばれているという錯覚です。なぜなら、夢はひとつに結びつくことが何であるかについてのエゴの歪んだ考えを反映しているからです。
Yet the Holy Spirit, too, has use for sleep, and can use dreams on behalf of waking if you will let him.
しかし、聖霊もまた眠りを役立たせることができます。そして、もしあなたが聖霊に任せるなら、聖霊はあなたを目覚めさせるために夢を使うことができます。

4. How you wake is the sign of how you have used sleep.
あなたがどのように目覚めるかによって、あなたがどのように眠りを使ったかがわかります。
To whom did you give it?
あなたは誰に眠りを渡したのでしょうか。
Under which teacher did you place it?
あなたはどちらの教師に眠りを委ねたのでしょうか。
Whenever you wake dispiritedly, it was not given to the Holy Spirit.
あなたが気落ちしたまま目覚めるときはいつも、眠りは聖霊に委ねられていなかったのです。
Only when you awaken joyously have you utilized sleep according to his purpose.
あなたがただ喜びに満たされて目覚めるときにのみ、あなたは聖霊の目的に従って眠りを活用していたのです。
You can indeed be "drugged" by sleep, if you have misused it on behalf of sickness.
もしあなたが病気のために眠りを誤って使ってしまったとすれば、あなたは実際に眠りによって「麻痺」させられることもありえます。
Sleep is no more a form of death than death is a form of unconsciousness.
死が無意識の一種ではないように、眠りは死の一種ではありません。
Complete unconsciousness is impossible.
完全に無意識でいることは不可能なことです。
You can rest in peace only because you are awake.
あなたが平安のうちに休むことができるのは、ただあなたが目覚めているからこそなのです。
5. Healing is release from the fear of waking and the substitution of the decision to wake.
癒しは、目覚めることに対する恐れから解放されることであり、目覚める決断に等しいものです。
The decision to wake is the reflection of the will to love, since all healing involves replacing fear with love.
目覚める決断は愛する意志を反映するものです。というのは、すべての癒しは必然的に愛が恐れに取って代わることを伴うからです。
The Holy Spirit cannot distinguish among degrees of error, for if he taught that one form of sickness is more serious than another, he would be teaching that one error can be more real than another.
聖霊には誤りの程度を識別することができません。というのは、もし聖霊がある形の病気は別の形の病気よりも深刻だと教えたりすれば、ある誤りがほかの誤りよりも、より現実でありうると教えていることになってしまうからです。
His function is to distinguish only between the false and the true, replacing the false with the true.
聖霊の役目は、ただ虚偽と真実を区別し、虚偽を真実に置き換えることだけです。

6. The ego, which always wants to weaken the mind, tries to separate it from the body in an attempt to destroy it.
いつでも心を弱体化することを欲しているエゴは、心を破滅させようと企てて、身体から心を分離させようと試みます。
Yet the ego actually believes that it is protecting it.
しかし、エゴは本気で自分は身体を守っているのだと信じています。
This is because the ego believes that mind is dangerous, and that to make mindless is to heal.
というのも、エゴは心は危険なものであり、心を無くすことが癒しになると信じているからです。
But to make mindless is impossible, since it would mean to make nothing out of what God created.
しかし、心を無くすことなど不可能です。なぜなら、心を無くすことは、神が創造したものから無を作り出すことを意味するからです。
The ego despises weakness, even though it makes every effort to induce it.
エゴは弱さを生み出すためにあらゆる努力を惜しまないくせに、エゴは弱さを軽蔑します。
The ego wants only what it hates.
エゴは自らが嫌悪するものだけを欲しがるのです。
To the ego this is perfectly sensible.
エゴにとっては、これは完璧に理に適っています。
Believing in the power of attack, the ego wants attack.
攻撃に力があると信じているので、エゴは攻撃したいと望むからです。
7. The Bible enjoins you to be perfect, to heal all errors, to take no thought of the body as separate and to accomplish all things in my name.
聖書はあなたがたに、完全であるように、すべての誤りを癒すように、身体を分離したものとして考えないように、そして、私の名においてすべてのことを成し遂げるようにと命じています。
This is not my name alone, for ours is a shared identification.
この私の名というのは、ただ私の名前だけを指すものではありません。というのは、私たちが同じ名を持つことは、私たちがひとつのアイデンティティーを分かち合っている印だからです。
The Name of God's Son is One, and you are enjoined to do the works of love because we share this Oneness.
神の子の名はひとつです。そして、私たちがこの大いなる一体性を分かち合うがゆえに、あなたは愛の業をなすようにと命ぜられているのです。
Our minds are whole because they are one.
私たちの心はひとつであるがゆえに、完全です。
If you are sick you are withdrawing from me.
もしあなたが病気だとすれば、あなたは私から離れて引きこもろうとしているのです。
Yet you cannot withdraw from me alone.
しかし、あなたは私だけから離れることはできません。
You can only withdraw from yourself and me.
あなたは、ただ、あなた自身と私の両方から離れることしかできないのです。

8. You have surely begun to realize that this is a very practical course, and one that means exactly what it says.
あなたはきっと、これがきわめて実践的なコースであり、それが述べていることがまさにその通りのことを意味していることに気づきはじめているはずです。
I would not ask you to do things you cannot do, and it is impossible that I could do things you cannot do.
私は、あなたにできないことをなすように要求するつもりはないし、あなたにできないことが私にできたはずがありえません。
Given this, and given this quite literally, nothing can prevent you from doing exactly what I ask, and everything argues for your doing it.
これがこの通りであれば、それも、きわめて文字通り、この通りであるなら、私があなたに求めることをあなたがその通りに行うのを妨げることは何ものにもできないばかりか、あらゆるものがあなたがそれを行うことに賛成するはずです。
I give you no limits because God lays none upon you.
神があなたに何の限界も設けていないのだから、私はあなたにどのような制限も課しません。
When you limit yourself we are not of one mind, and that is sickness.
あなたが自分自身を制限するなら、私たちはひとつの心に属するとはいえなくなってしまいます。そして、それこそが病気です。
Yet sickness is not of the body, but of the mind.
もっとも、病気とは、身体が病むことではなくて、心が病むことです。
All forms of sickness are signs that the mind is split, and does not accept a unified purpose.
病気のあらゆる形態は、心が分裂して、統一された目的を受け入れていないことの印です。
9. The unification of purpose, then, is the Holy Spirit's only way of healing.
それゆえ、目的を統一させることこそ、聖霊の唯一の癒し方です。
This is because it is the only level at which healing means anything.
目的を統一することが癒しとなるのは、目的のレベルだけが癒しが意味を持ちうる唯一のレベルだからです。
The re-establishing of meaning in a chaotic thought system is the way to heal it.
混乱した思考システムの中に意味を再び確立することが、そのシステムを癒す方法です。
Your task is only to meet the conditions for meaning, since meaning itself is of God.
あなたの任務は、ただ意味をなすための条件を満たすことだけです。なぜなら、意味それ自体は神から来るものだからです。
Yet your return to meaning is essential to his, because your meaning is part of his.
しかし、あなたが意味を取り戻すことは神の意味にとって絶対に必要なことです。なぜなら、あなたの意味は神の意味の一部だからです。
Your healing, then, is part of his health, since it is part of his wholeness.
ですから、あなたが癒されることは、神が健やかになることの一部といえます。というのも、あなたが癒されて健やかになることは神の完全性の一部だからです。
He cannot lose this, but you can not know it.
神はその完全性を失うことはできませんが、あなたは神の完全性を知らずにいることはできます。
Yet it is still his will for you, and his will must stand forever and in all things.
しかし、完全であることこそ今なお神のあなたに対する意志であり、神の意志は永遠に変わらず、そして、あらゆるものの中で持ちこたえることでしょう。


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