P intro,1 心理療法(目的、プロセス、そして実践)

2014年02月22日
心理療法 第1章 0

多くの人が「被害者意識の監獄」に留まるのは、無意識のうちにその方が安全だと感じるからだ。人は原因がわかりさえすれば、苦しみが和らぐと信じ、「なぜ?」という問いを繰り返す。なぜ、私はがんになったのか? なぜ、私は失業したのか? なぜ、パートナーは浮気をしたのか? 人は答えを探し、理解しようとする。まるで、なぜそんなことが起こったのかを説明する論理的な理由があるかのように。

だが、理由を求めていては、責めるべき人、責めるべきものを探して行き詰まることになるーーそして、責めるべき対象には自分自身も含まれている。
なぜ、私にこんなことが起こったのか?
なぜ、あなたではいけないのだろう?

私はアウシュビッツに送られ、生き延びたから、今、あなたに話すことができ、被害者でなく生還者になる方法を教える実例として生きていられるのかもしれない。私は、「なぜ、私なのか?」でなく、「今、何をすればいいのか?」と問うことで、悪い出来事が起こったーー起きつつあるーー理由に注目するのをやめ、その経験からできることを考えられるようになる。私は救済者や自分の身代わりを探したりしない。そうではなく、選択や可能性に目を向けるようになるのだ。
・・・

被害者意識とは心の死後硬直のようなもの。それは過去に足止めされ、痛みに身動きできなくなり、悲しみと失ったものーーできないこと、持っていないものーーにこだわり続けることだ。

被害者意識から抜け出すための第一のツールは次のようなものだ。まず、何が起こっていようと、それを優しく抱きしめること。ひどいことが起きても、その出来事を好きになれという意味ではない。けれども、闘いや抵抗をやめれば、「今、何をすればいいのか?」を理解するために使えるエネルギーや想像力を増やせる。どこにも行きつかないのではなく、前に進むために。この瞬間に自分が欲しいもの、自分に必要なもの、ここからどこへ行きたいのかを知るために。

どんな行動も、ひとつは欲求を満たしてくれる。多くの人が被害者でいるのを選ぶのは、そうすれば自分自身のために何もしなくていいからだ。だが、自由には代償が伴う。人は自分の行動に責任を負うことを求められるーー自分が起こしたわけでも、選んだわけでもない状況であっても、責任を取らなければならないのだ。

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エディス・エヴァ・イーガー(「心の監獄」22ページ)








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心理療法の「目的、プロセス、そして実践」の序文と1.心理療法の目的をご紹介します。


私たちは狂気に陥っているがゆえに、治療法となるのは心理療法のみ

序文の冒頭から、実は、私たちはみんな、幻想である世界を「現実」だと信じ込む狂気に陥っている狂人なので、治療法になりうるのは心理療法のみであるということが語られます。

コースに馴染んできている人からすれば、このように言われることにもだいぶ慣れていて違和感がなくなっていると思いますが、はじめてコースに触れる人からすると、カチンときて拒絶反応を示したくなる指摘です。

ですが、自分でも薄々感づいている真実を突かれたときにこそ痛みを覚えるというのは誰にでも当てはまる真理です。

むかつく相手からけんか腰で罵声を浴びせられて態度自体に憤慨するということもあります。

しかし、それとは別に、淡々とありのままの突かれて痛い事実を告げられて受け入れられずに怒りが湧くという類型もあります。

あなたは意気地なしだと指摘されてムカッとくるのは自分は意気地なしだという自覚を隠して虚勢を張っている人だけで、本当に勇気のある人は、人からどう言われようと、そんなことは蛙の面に水で、気にもなりません。

これと同じように、世界は実在しない、私たちはみな正気を失っていると告げられて、その通りかもしれないと思う人はもちろんですが、絶対そんなはずはない!と必要以上に反発を感じる人は、無意識ながらも、世界の幻想性を鋭敏に感じ取っているのかもしれません。




患者は自分には自己決定する力があるという自覚を取り戻さなければならない

さて、私たちは、確固たる実在性を持つ世界の中に、肉体を持つ人間として自分は生きており、このエゴ・身体こそ自分自身だと固く信じていて、この小さな自己は広大な宇宙の中の砂粒ほどの価値や力しかない塵のような存在なので、外部勢力に小突き回されては哀れに死んでゆくだけで、周囲の世界はおろか自分自身すら満足にコントロールできないと思っています。

しかし、真実は、この世界は幻想で、その中の身体も幻想で、分離した自己というエゴも錯覚であり、神の子がエゴ・身体というアバターになりきって、投影によって外の世界を自分で作り出していただけで、外の世界や他者からされたと思っていたことはすべて自分が自分にしていたのだ、つまり、世界は存在しないということです。

そこで、この狂気の沙汰から神の子が脱出して正気を取り戻すために、心理療法は、患者に自分で決定する力があるという自覚を回復させなければなりません。

このように、神の子が見失ってしまった道と真理と生命を取り戻して神を思い出す手助けをすることが、心理療法のもっぱらの目的です。





PSYCHOTHERAPY:
心理療法



purpose, process and practice.
目的、プロセス、そして実践



Introduction:
序文



1. Psychotherapy is the only form of therapy there is.
 治療の種類として唯一存在意義を持つのは、心理療法だけです。

 Since only the mind can be sick, only the mind can be healed.
 なぜなら、病むことができるのは心だけなので、癒されうるのは心だけだからです。

 Only the mind is in need of healing.
 癒しを必要とするのは、ただ心だけなのです。

 This does not appear to be the case, for the manifestations of this world seem real indeed.
 これは事実であるようには思えません。というのも、この世界に現れているいろんな物事はどう見ても本物にしか思えないからです。

 Psychotherapy is necessary so that an individual can begin to question their reality.
 誰しも、この世界に現れている物事の実在性を問い始めることができるようになるためには、心理療法が必要です。

 Sometimes he is able to start to open his mind without formal help, but even then it is always some change in his perception of interpersonal relationships that enables him to do so.
 たまに、適切な手順に則った助力を受けることなしに、ある人が自分の心を開き始めることもないわけではありません。しかし、そんなときですら、彼が心が開き始められるようになったのは、つねに人と人との間の関係性についてのその人の知覚に何らかの変化が生じたことによってなのです。

 Sometimes he needs a more structured, extended relationship with an "official" therapist.
 ときには、ある人は「正式な」セラピストと、よりしっかりとした長期的な関係を持つことを必要とします。

 Either way, the task is the same; the patient must be helped to change his mind about the "reality" of illusions.
 いずれにせよ、なすべき課題は同じです。患者は、幻想を「現実」とみなす自らの心を変えるための支援を受けなければならないのです。






1. THE PURPOSE OF PSYCHOTHERAPY
心理療法の目的



1. Very simply, the purpose of psychotherapy is to remove the blocks to truth.
 きわめて簡潔に言えば、心理療法の目的は、真理に至るうえでの障害を取り除くことです。

 Its aim is to aid the patient in abandoning his fixed delusional system, and to begin to reconsider the spurious cause and effect relationships on which it rests.
 心理療法が焦点を合わせているのは、患者が自分の固定化した妄想システムを捨て去って、妄想システムが依拠する偽りの因果関係を考え直しはじめられるように患者を支援することです。

 No one in this world escapes fear, but everyone can reconsider its causes and learn to evaluate them correctly.
 この世界では、誰もが恐怖を免れません。それでも、恐怖の原因を改めて考えてみて、恐怖を正確に評価することを学ぶことは誰にでもできます。

 God has given everyone a Teacher Whose wisdom and help far exceed whatever contributions an earthly therapist can provide.
 神は、すべての者たちにひとりの大いなる教師を与えてくれました。この世界のセラピストが提供できるどんな貢献も、大いなる教師である聖霊の英知と支援の偉大さには遠く及びません。

 Yet there are times and situations in which an earthly patient-therapist relationship becomes the means through which He offers His greater gifts to both.
 しかし、時と場合によっては、この世界での患者とセラピストの関係性は、聖霊がその偉大な力を患者とセラピストの双方に差し延べる場として役に立ちます。



2. What better purpose could any relationship have than to invite the Holy Spirit to enter into it and give it His Own great gift of rejoicing?
 どの関係にとっても、聖霊に関係の中に入ってきて、聖霊の持つ偉大な喜びという贈り物を関係に与えてくれるよう聖霊を招待することに優るどんなよい目的がありうるでしょうか。

 What higher goal could there be for anyone than to learn to call upon God and hear His Answer?
 誰にとっても、神に頼んで神の大いなる答えを聞くことを学ぶことに優るどんな崇高な目標がありうるでしょうか。

 And what more transcendent aim can there be than to recall the way, the truth and the life, and to remember God?
 そして、道と真理と生命を取り戻して神を思い出すことに優るより卓越したいかなる目的がありうるでしょうか。

 To help in this is the proper purpose of psychotherapy.
 道と真理と生命を取り戻して神を思い出す手助けをすることが、心理療法のもっぱらの目的なのです。

 Could anything be holier?
 これほど神聖なことは、ほかにありません。

 For psychotherapy, correctly understood, teaches forgiveness and helps the patient to recognize and accept it.
 というのは、正確に理解されるなら、心理療法は赦しを教え、患者が赦しを承認して受け入れられるように手助けすることだからです。

 And in his healing is the therapist forgiven with him.
 そして、患者が癒されることで、セラピスト自身も患者とともに赦されます。



3. Everyone who needs help, regardless of the form of his distress, is attacking himself, and his peace of mind is suffering in consequence.
 その人の苦悩の形に関わりなく、助けを必要とする誰もが、実は自分自身を攻撃しているのであり、その結果として、彼は心の平安を損なって苦しんでいるのです。

 These tendencies are often described as "self-destructive," and the patient often regards them in that way himself.
 このような助けを求めているのに自分自身を攻撃してしまうという性向は、しばしば「自滅的」なものとして描写されるし、患者はたびたび自分で自分のことを自滅的な存在だとみなしもします。

 What he does not realize and needs to learn is that this "self," which can attack and be attacked as well, is a concept he made up.
 患者が気づいておらず、学ばなければならないのは、攻撃することも攻撃されることも可能なこの「自己」とは、患者が作りあげたひとつの概念だということです。

 Further, he cherishes it, defends it, and is sometimes even willing to "sacrifice" his "life" on its behalf.
 しかも、患者はこの「自己」を大切にして守ろうとするし、ときには「自己」のために喜んで自らの「生命」を「犠牲」を差し出そうとすらします。

 For he regards it as himself.
 というのも、患者は、この「自己」こそが自分自身だとみなしているからです。

 This self he sees as being acted on, reacting to external forces as they demand, and helpless midst the power of the world.
 患者はこの小さな自己のことを、外部の力に対して、それらの力が要求する通りに反応する、世界の力の中で無力に翻弄されるだけの存在だとみなしています。



4. Psychotherapy, then, must restore to his awareness the ability to make his own decisions.
 それゆえ、心理療法は、患者に自分自身で決定する能力についての自覚を回復させなければなりません。

 He must become willing to reverse his thinking, and to understand that what he thought projected its effects on him were made by his projections on the world.
 彼は、自分の考え方を逆転させる意欲をもって、世界がその結果を自分に押しつけていると思っていた状況は、実は、自分が世界に投影することによって作り出されていたのだと理解する意欲を持たなければなりません。

 The world he sees does therefore not exist.
 つまり、彼に見えている世界は存在しないのです。

 Until this is at least in part accepted, the patient cannot see himself as really capable of making decisions.
 このことが少なくとも部分的にでも受け入れられないかぎり、自分には決断を下すことが本当にできるということが患者には理解できません。

 And he will fight against his freedom because he thinks that it is slavery.
 このことをまったく受け入れられないかぎり、患者は自分が自由になることを自分が隷属することだと考えてしまうので、彼は自分が自由になることに抵抗して戦おうとしてしまうでしょう。



5. The patient need not think of truth as God in order to make progress in salvation.
 救済において前進するために、患者は、真理を神とみなす必要はありません。

 But he must begin to separate truth from illusion, recognizing that they are not the same, and becoming increasingly willing to see illusions as false and to accept the truth as true.
 しかし、患者は、幻想と真理が同じではないと気づくことによって、幻想から真理を区別しはじめ、徐々に幻想を偽りと見て真理を真実として受け入れる意欲を持つようにならなければなりません。

 His Teacher will take him on from there, as far as he is ready to go.
 そうすれば、そこから先は、患者の大いなる教師である聖霊が彼を連れて、彼に準備のできているだけ遠くまで連れて行ってくれるでしょう。

 Psychotherapy can only save him time.
 心理療法にできるのは、ただ患者の時間を節約することだけです。

 The Holy Spirit uses time as He thinks best, and He is never wrong.
 聖霊は、聖霊が最善と考えるように時間を用います。そして、聖霊が時間の用い方を誤ることは決してありません。

 Psychotherapy under His direction is one of the means He uses to save time, and to prepare additional teachers for His work.
 聖霊の指導する心理療法は、聖霊が時間を節約し、聖霊の働きを助ける教師たちに用意を整えさせるために用いる手段のひとつです。

 There is no end to the help that He begins and He directs.
 聖霊が着手して聖霊が指揮する救いには、限界がありません。

 By whatever routes He chooses, all psychotherapy leads to God in the end.
 聖霊がどのようなルートを選ぼうとも、すべての心理療法は最後には神へと通じるからです。

 But that is up to Him.
 しかし、どのような道筋を辿ることになるかは神に委ねられています。

 We are all His psychotherapists, for He would have us all be healed in Him.
 私たちはみんな、神の導きを受ける心理療法のセラピストです。というのも、神は私たちみんなを神の中で癒すつもりでいるからです。


次

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 松山 健 Matsuyama Ken
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