T28-6 秘密の誓約
トゥイードルダムとトゥイードルディーが一戦交えるごとに「同意」したときのように、「白と黒」のゲームに不可欠なトリックというのは、パートナーたちにその一体性を隠し、可能なかぎり別もののように見せかけるための、極秘の申し合わせである。
それはちょうど、観客たちがほんとうの喧嘩だと信じ込みかねないほどうまく演じられる、ステージ上での喧嘩のようなものだ。
外見上の明らかな差異の裏に隠されているのは、ヴェーダーンタが〈自己〉と呼んでいる内在的な一体性であり、唯一無二性であり、”在るもの”であり、あなたという形の中に自らを隠している”すべてのもの”である。

アラン・ワッツ(「『ラットレース』から抜け出す方法」90ページ)
あらゆる客観的現実は、主観的な合意の上に成り立っています。でも、この合意を厳密によく調べてみれば、紙のように薄くてあなたの知覚する世界を覆っている膜のようなものだとわかります。その薄膜の下では、誰の間にもどんな合意もありません。

イエス・キリスト(ポール・フェリーニ著「無条件の愛 キリスト意識を鏡として」より)
すばらしいのは、なぜいま自分が置かれている状況を自ら作り出したのか、あるいはどんな信念のせいでその状況を作り出してしまったのかを知る必要はないということです。ただその状況の存在自体を完璧だとみなそうという「前向きな姿勢」で違った角度からとらえるチャンスだと考えれば、必要とされる見方の転換を引き起こし、もともと抱えている痛みを癒すには十分なのです。
実のところ、人間世界からは、なぜそういう状況なのかを知ることはできません。なぜなら、その答えは神聖なる真理の世界にあり、私たちが人間の姿をしているかぎり、その世界については何も知りえないからです。私たちにできるのは、状況に身をゆだねることだけなのです。

コリン・C.ティッピング(「人生を癒すゆるしのワーク」119ページ)

今回はテキストから「秘密の誓約」という一節をご紹介します。
秘密の誓約
秘密の誓約とは、私たちが兄弟みんなとの間で交わした約束であり、お互いに自分たちを分離した他者であると認識し、お互いに攻撃し、それに対する報復として攻撃し返すという誓いです。

私たちはすでに、分離した神の子たちがお互いの間にあってほしいと望む隔たり、わずかな隙間というひとつの分離幻想が、時空となり、キリストの顔にかかる影となることを学びました(T26-8 救いはもう、済んでいる)。
他者と離れたままでいたいと願い、この隔たりを保ったままでいたいという願望を各自が抱き、その秘密の願望同士が暗黙裡に合意に達することによって、秘密の誓約は交わされます。
ピースの細分化によって解像度が低くなって記憶喪失になっているだけ→分離は錯覚
しかし、分離は幻想であり、真実は、神のひとり子が神とひとつに結ばれたままあるだけで、神の子が解離性同一障害に陥って、自分を空想の世界の中で無数のアバターに分裂させているだけです。
つまり、妄想の中は別として現実においては、分離が現実のものになったことなど一度もないのだから、必要なのは、ばらばらになったかけらを統合するという気の遠くなる大事業を成し遂げることではなく、ありえない分離を空想してそれを信じ込んでいる狂気から脱することだけです。

分離が本当に起こった現実であったなら、ばらばらになった無数のジグソーパズルのピースをすべて揃えて、そのうえで、すべてのピースをあるべき位置にはめこまなければなりません。これは不可能です。
しかし、分離は錯覚でしかないなら、ピースの細分化によって見失われ、不分明になって忘れ去られてしまった全体像を取り戻す、思い出すことだけが要点となります。
聖霊によって兄弟と結ばれて神の記憶の解像度を上げる
この記憶喚起の手段として、ピースをある程度揃えて組み合わせる作業が役に立つこともあるかもしれませんが、すべてのかけらの中には、ホログラム的に全体像が含まれていて、細分化の程度に従って鮮明度が低下するという仕組みだとすれば(T28-4 打ち砕かれたかけらの中に潜むものは)、他者と結びつく意義は、お互いにパズルのピースのように欠けを補い合って補完するためではなく、細分化による情報欠落によって損なわれた鮮明度を回復するためという点にあることになります。
つまり、自他の中に同じ聖霊がいるという認識を通じて、共有している神の記憶の鮮明度を高めるために他者とひとつに結ばれることが重要であり、そのためには、罪は実在せず、他者は潔白であるということを赦しを通して認識することが手段となります。
「6. Let this be your agreement with each one; that you be one with him and not apart.
次のことについて、あなたに一人ひとりの兄弟たちと合意してほしいのです。それは、あなたはその兄弟とひとつなのであって分離してなどいないということです。」

テキスト第二十八章
VI. The Secret Vows
六 秘密の誓約
1. Who punishes the body is insane.
身体を罰しようとする者は狂っています。
For here the little gap is seen, and yet it is not here.
というのは、身体と身体の間にわずかな隙間があるように見えてはいても、そこに隔たりなど存在しないからです。
It has not judged itself, nor made itself to be what it is not.
身体は自らを裁いたことはないし、身体そのものを本来とは違うものに変えてもいません。
It does not seek to make of pain a joy and look for lasting pleasure in the dust.
身体は、苦しみを喜びに変えようとしたり、塵の中に永続する満足を探し求めたりはしません。
It does not tell you what its purpose is and cannot understand what it is for.
身体は、身体の目的が何なのかあなたに教えてはくれないし、身体には、身体が何のためにあるのか理解することもできません。
It does not victimize, because it has no will, no preferences and no doubts.
身体が何かを犠牲にすることもありません。なぜなら、身体はそれ自体の意志を持たないし、いかなる好みもいかなる疑問も持たないからです。
It does not wonder what it is.
身体が自らの本質は何なのだろうかと不思議に思ったりすることはありません。
And so it has no need to be competitive.
したがって、身体には競い合う必要などありません。
It can be victimized, but cannot feel itself as victim.
身体が犠牲にされることはありえますが、身体には自分が犠牲になったと感じることはできません。
It accepts no role, but does what it is told, without attack.
身体はどんな役目も引き受けることはなく、ただ命じられたことを文句も言わずに遂行するだけです。

2. It is indeed a senseless point of view to hold responsible for sight a thing that cannot see, and blame it for the sounds you do not like, although it cannot hear.
見ることができないものに見えることの責任を取らせようとしたり、あなたの気に入らない音について聞くことのできないもののせいにして非難したりするのは、実に愚かなものの見方です。
It suffers not the punishment you give because it has no feeling.
身体は何の感情も持たないので、あなたの与える罰によって身体が苦しむことはありません。
It behaves in ways you want, but never makes the choice.
身体はあなたの望みどおりに振舞いはしますが、決して自ら選択することはありません。
It is not born and does not die.
身体は生まれることはなく、死ぬこともありません。
It can but follow aimlessly the path on which it has been set.
身体は、自分が置かれた道に沿って、当てもなく道を辿ることしかできません。
And if that path is changed, it walks as easily another way.
そして、もしその道が変えられたら、それまでと変わらない容易さで身体は別の道を歩んでゆきます。
It takes no sides and judges not the road it travels.
身体は自らの旅路のうちのどれかに肩入れすることもなければ、その価値を裁くこともありません。
It perceives no gap, because it does not hate.
身体は憎むことがないので、いかなる隙間も知覚することはありません。
It can be used for hate, but it cannot be hateful made thereby.
身体を憎しみのために使うことはできます。しかし、憎しみの道具にされることで、身体が憎悪に満ちたものに変わることはありえません。
3. The thing you hate and fear and loathe and want, the body does not know.
身体は、あなたが憎み、恐れ、嫌悪し、欲するもののことなど関知しません。
You send it forth to seek for separation and be separate.
あなたは分離を求め、分離するために身体を送り出します。
And then you hate it, not for what it is, but for the uses you have made of it.
そのうえで、あなたは身体を憎みます。それは、身体そのもののゆえではなく、あなたが身体を利用して行うことを理由に憎んでいるのです。
You shrink from what it sees and what it hears, and hate its frailty and littleness.
あなたは身体が見たり聞いたりするものから尻込みして、身体の脆弱さや矮小さを憎みます。
And you despise its acts, but not your own.
そして、あなたは、自分が身体にそうさせていることは棚に上げて、身体の行いを軽蔑します。
It sees and acts for you.
しかし、身体は、あなたのためにあなたに代わってが見たり行動したりしているのです。
It hears your voice.
身体が耳を貸すのはあなたの声です。
And it is frail and little by your wish.
つまり、身体が脆弱で矮小なのは、あなたがそう願っているからなのです。
It seems to punish you, and thus deserve your hatred for the limitations that it brings to you.
一見すると、身体があなたをひどい目に遭わせているように思えるので、身体があなたにもたらす制限のゆえに、あなたが身体に憎しみを抱くのも当然のように思えます。
Yet you have made of it a symbol for the limitations that you want your mind to have and see and keep.
しかし、あなたが自分の心に抱かせたい、見させたい、保持させたいと欲する制限を身体に象徴させているのはあなた自身なのです。

4. The body represents the gap between the little bit of mind you call your own and all the rest of what is really yours.
身体は、あなたが自分のものと呼ぶほんの小さな心の一部と、それ以外の本当はあなたのものである残りのすべての心の部分との間の裂け目を具象化したものです。
You hate it, yet you think it is your self, and that, without it, would your self be lost.
あなたは身体を憎んでいますが、あなたは身体こそが自分の自己だと思っているので、身体をなくそうものなら、あなたは我を失ってしまうと思っています。
This is the secret vow that you have made with every brother who would walk apart.
ここに、離ればなれのままで歩んでいる兄弟一人ひとりとあなたが交わした秘密の誓いがあります。
This is the secret oath you take again, whenever you perceive yourself attacked.
これこそ、自分自身が攻撃されていると知覚するたびに、あなたが再び立てなおす秘密の誓いです。
No one can suffer if he does not see himself attacked, and losing by attack.
もし自分自身のことを攻撃されていて、攻撃によって敗北して損失を被る存在だとみなさなかったなら、誰も苦しむことはできないはずです。
Unstated and unheard in consciousness is every pledge to sickness.
自覚して言ったり聞いたりしてはいなくても、攻撃を知覚するたびに病気になると誓っているのです。
Yet it is a promise to another to be hurt by him, and to attack him in return.
しかし、それは他者に対して、彼によって傷つけられ、その仕返しとして彼を攻撃するという約束です。
5. Sickness is anger taken out upon the body, so that it will suffer pain.
病気は、身体が苦痛を味わうようにと、怒りが身体に向けてぶつけられたものです。
It is the obvious effect of what was made in secret, in agreement with another's secret wish to be apart from you, as you would be apart from him.
これは、あなたが他者から離れていたいと願うように、誰かがあなたから離れていたいという願いを胸に秘めていて、その密かな願望同士が秘密裡に合意に達したことの明らかな結果です。
Unless you both agree that is your wish, it can have no effects.
互いに分離することを自分たちの願望とすることにあなたたちふたりがともに同意しないかぎり、そんな願望は何の結果も生み出せないはずです。
Whoever says, "There is no gap between my mind and yours" has kept God's promise, not his tiny oath to be forever faithful unto death.
誰であれ、「私の心とあなたの心の間にはまったく隔たりはない」と言う人は、永遠に死に忠実でいようという自らのちっぽけな誓いではなく、神との約束を守ったのです。
And by his healing is his brother healed.
そして、彼が癒されることによって、その兄弟も癒されます。

6. Let this be your agreement with each one; that you be one with him and not apart.
次のことについて、あなたに一人ひとりの兄弟たちと合意してほしいのです。それは、あなたはその兄弟とひとつなのであって分離してなどいないということです。
And he will keep the promise that you make with him, because it is the one that he has made to God, as God has made to him.
そうすれば、その兄弟はあなたと交わすその約束を守ってくれるでしょう。 なぜなら、その約束は、神が彼に約束した通りに、彼が神に約束したことだからです。
God keeps His promises; His Son keeps his.
神は自らの約束を守り、子も自らの約束を守ります。
In his creation did his Father say, "You are beloved of Me and I of you forever.Be you perfect as Myself, for you can never be apart from Me."
子を創造するに際して、大いなる父は次のように言いました。「私はあなたを永遠に愛しているし、あなたも私を永遠に愛している。私自身と同じく完全でありなさい。あなたは決して私から離れることはできないのだから。」と。
His Son remembers not that he replied "I will," though in that promise he was born.
そう約束して生まれてきたというのに、子は神の言葉に対して、「私はそうします」と自分が答えたことを覚えていません。
Yet God reminds him of it every time he does not share a promise to be sick, but lets his mind be healed and unified.
しかし、子が病気になるという約束を分かち合うことなく、自らの心を癒してもらってひとつに結ばれようにするたびに、神はそのことを思い出させてくれます。
His secret vows are powerless before the Will of God, Whose promises he shares.
子の秘密の誓いなど、子が約束を分かち合っている神の大いなる意志を前にしては無力です。
And what he substitutes is not his will, who has made promise of himself to God.
だから、自ら神に対して約束をした子にとって、秘密の誓いを神との約束に置き換えることが本意であるはずがありません。

