T19-4D 平安への障害4


I’m an atheist and I thank God for it.
私は無神論者だが、自分が無神論者でいられることについて神に感謝している。



George Bernard Shaw
ジョージ・バーナード・ショー



苦しい修行の末に賢人ナーラダはヴィシュヌ神に次のように言った。「私は錯覚を克服できるようになりました。」ヴィシュヌ神はナーラダに錯覚の真の力(ヴィシュヌ神の持つマーヤーという不思議な力)を見せてやろうと約束した。朝、目覚めると男性のナーラダはスシラという女性になっており、ナーラダとしての記憶をすべて失っていた。スシラは王様と結婚し、妊娠し、ついには8人の息子と多くの孫に恵まれた。だが、あるとき敵が攻めてきて、スシラの息子と孫全員が殺された。悲嘆に暮れるスシラ王妃の前にヴィシュヌ神が現れた。「なぜ悲しんでいる? これは錯覚にすぎないのだ」。気づくと、ナーラダは元の体に戻っていて、ヴィシュヌ神と会話を交わしてから1秒しか経っていなかった。スシラとしての人生と同じように、自分の人生も錯覚なのだ、と彼は思った。

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David J. Chalmers, Reality+: Virtual Worlds and the Problems of Philosophy
デイヴィッド・J・チャーマーズ(「リアリティ+ バーチャル世界をめぐる哲学の挑戦」上巻38ページ)





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テキスト第十九章 第四節 平安への障害の続きです。

今回は第四の障害である「神への恐れ」です。


平安が直面する最後の障害

死への恐怖が去ると、平安は、最後の障害に直面することになります。

それは、キリストの顔の前にヴェールのようにかかっている神への恐怖です。

神への恐れこそが究極の障害であり、罪悪感の魅力も苦痛の魅力も死の魅力も、神への恐れが決して除去されないようにするためのものであり、エゴや死は自分がキリストと心をひとつに結び付けることができないように私たちが自ら選んだ同盟者、味方なのだということが語られます。

もっとも、平安が流れ渡らなければならない障害はすべて、それらの障害を生じさせていた恐れが、恐れを越えた向こう側にある愛に道を譲り、それによって恐怖が去ってしまうというまったく同じ方法で乗り越えられるのであり、神への恐れという障害についても、同じことが言えます。


愛と結ばれることは幻を手放すこと → 神への恐れは世界への執着



第一から第三の障害までを越えた私たちは、自分がかつて絶対に見ないと誓ったものを前にして恐れおののいています。

分離した他者に罪を着せたり罪深い自分を哀れんだりと心穏やかでない刹那的な刺激を味わう罪悪感の魅力や、苦痛と快楽を混同する身体の渇望を満たすこと、罪深い身体とともに自らが滅することを神聖に感じること、といったこれまでの障害が改めて魅力でひきつけ、さらに絶対に見ないという盟約を破ることでエゴからもたらされる復讐への恐怖によって、私たちは目を上げることができないままキリストの顔の前に垂れるヴェールの前に立ちすくみます。

私たちは、このヴェールがあがったら、すべてが永遠に去ってしまうと感じ取って、それらを失うことを恐れています。

たしかに、これはその通りですが、実際に起こるのは、一幕の劇が終わること、リアルな夢から目覚めることと同じように、この世界をあとにして立ち去って、ヴェールの向こう側にある大いなる愛、自らの故郷に帰ることです。


大いなる愛を恐れる必要はない

これからまだ人生劇場が続いてゆくと思っている若い人からすると、この喪失感はとてつもなく大きく感じますが、お迎えの近い年代の人からすると、結局はそう遠くない時期に身体ともこの世ともおさらばして去ることになって、いずれにせよ、今の自分や世界から離れることになるのなら、その先の行く手が、自分が完全に消滅したり、輪廻したり、また同じ自分の人生を繰り返したり、地獄に行ったりするよりも、神の子として本当の故郷である天国に帰れるのなら、そのほうがずっとよいと思うのではないでしょうか。




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D. The Fourth Obstacle: The Fear of God
D 第四の障害 ― 神への恐れ



1. What would you see without the fear of death?
 死に対する恐怖をなくしたら、はたしてあなたは何を見るようになるのでしょうか。

 What would you feel and think if death held no attraction for you?
 もし死があなたを惹きつける力を持たなくなったなら、はたしてあなたは何を感じ、どんなことを思うようになるのでしょうか。

 Very simply, you would remember your Father.
 ごく簡潔に言うなら、あなたは自らの大いなる父を思い出すようになるのです。

 The Creator of life, the Source of everything that lives, the Father of the universe and of the universe of universes, and of everything that lies even beyond them would you remember.
 生命の偉大なる創造主にして生命あるものすべての大いなる源、そして、この世界とさまざまな世界を包みこむ全宇宙、さらにそれらの全宇宙すら超える森羅万象の偉大な生みの親をあなたは思い出すことになります。

 And as this memory rises in your mind, peace must still surmount a final obstacle, after which is salvation completed, and the Son of God entirely restored to sanity.
 ただし、あなたの心にこの記憶がよみがえってくるには、平安はなお最後の障害を乗り越えなければなりません。最後の障害を乗り越えたなら、そのあと、救済は完了し、神の子は完全に正気を取り戻します。

 For here your world does end.
 というのも、確実にここで、あなたの世界が終わるからです。

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2. The fourth obstacle to be surmounted hangs like a heavy veil before the face of Christ.
 乗り越えねばならない第四の障害は、キリストの顔の前に分厚いヴェールのようにかかっています。

 Yet as his face rises beyond it, shining with joy because he is in his Father's Love, peace will lightly brush the veil aside and run to meet him, and to join with him at last.
 しかし、父の大いなる愛に抱かれる喜びに輝きながらキリストがそのヴェールの向こう側で顔を上げるとき、平安は軽々とそのヴェールを払い除けて、キリストに会うために駈けつけて、ついにキリストとひとつに結ばれるでしょう。

 For this dark veil, which seems to make the face of Christ himself like to a leper's, and the bright Rays of his Father's love that light his face with glory appear as streams of blood, fades in the blazing light beyond it when the fear of death is gone.
 というのも、この暗いヴェールがキリストの美しい顔を醜いものに見せたり、キリストの顔を栄光で輝かせる父の大いなる愛の輝きに満ちた光線をまるで流れ伝う血の滴りのように見せたりしていたのですが、死の恐怖が去ってしまえば、それらはヴェールの向こう側で燃え立つように輝く光の中に姿を消すことになるからです。



3. This is the darkest veil, upheld by the belief in death and protected by its attraction.
 これこそ、死を信仰することで維持され、死の魅力によって守られている最も暗いヴェールです。

 The dedication to death and to its sovereignty is but the solemn vow, the promise made in secret to the ego never to lift this veil, not to approach it, nor even to suspect that it is there.
 死とその統治に心を捧げて帰依することは、絶対にこのヴェールを持ち上げたり、ヴェールに近づいたりせず、しかも、そんなヴェールの存在を疑いすらしないと固い誓いを立てて、密かにエゴに約束することです。

 This is the secret bargain made with the ego to keep what lies beyond the veil forever blotted out and unremembered.
 これこそがヴェールの向こう側に存在するものを永遠に覆い隠して、思い出されないままに保つために交わしたエゴとの秘密の契約です。

 Here is your promise never to allow union to call you out of separation; the great amnesia in which the memory of God seems quite forgotten; the cleavage of your Self from you... the fear of God , the final step in your dissociation.
 ここにこそ、分離状態から自分が呼び出されてひとつに結ばれることを絶対に許可しないというあなたの約束があります。その分離状態とは、神の記憶を完全に忘れ去ってしまったかに思えるような深刻な記憶喪失であり、あなたの真の自己があなたから分裂した状態です。それは、神に対する恐怖であり、あなたが意識を解離させる状態の最終段階です。

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4. See how the belief in death would seem to "save" you.
 なぜ死を信仰することがあなたを「救う」ことになるように思えるのか考えてみてください。

 For if this were gone, what could you fear but life?
 それは、もし死への信仰をなくしたら、あなたには生命しか恐れるものがなくなってしまうからです。

 It is the attraction of death that makes life seem to be ugly, cruel and tyrannical.
 死の魅力が、生命というものを醜悪で残酷で横暴なものに思わせるのです。

 You are no more afraid of death than of the ego.
 あなたはエゴを恐れているわけでも、死を恐れているわけでもありません。

 These are your chosen friends.
 エゴも死も、あなたが選んだ味方なのです。

 For in your secret alliance with them you have agreed never to let the fear of God be lifted, so you could look upon the face of Christ and join him in his Father.
 というのは、あなたはエゴや死と秘密の同盟を結んで、あなたがキリストの顔を見つめて大いなる父の中でキリストと心をひとつに結び合わせることができないように、神に対する恐れが決して取り除かれないようにすることに同意したからです。



5. Every obstacle that peace must flow across is surmounted in just the same way; the fear that raised it yields to the love beyond, and so the fear is gone.
 平安が流れ渡らなければならない障害はどれもみな、まったく同じ方法で乗り越えられます。それは、それらの障害を生じさせていた恐れが、恐れを越えた向こう側にある愛に道を譲り、それによって恐怖が去ってしまうという方法です。

 And so it is with this.
 神への恐れという障害についても、同じことが言えます。

 The desire to get rid of peace and drive the Holy Spirit from you fades in the presence of the quiet recognition that you love him.
 平安を捨てて自分から聖霊を追い出したいという願望は、あなたが穏やかに自分は聖霊を愛していると認めるようになれば、次第に消えてゆきます。

 The exaltation of the body is given up in favor of the spirit, which you love as you could never love the body.
 身体を重視して賛美することは、霊を支持することによって放棄されます。なぜなら、あなたは決して身体に対して抱くことのできないような愛で霊を愛しているからです。

 And the appeal of death is lost forever as love's attraction stirs and calls to you.
 そして、愛の魅力が心を揺さぶってあなたに呼びかけるとき、死の魅力は永遠に失われます。

 From beyond each of the obstacles to love, Love Itself has called.
 愛に至る障害の一つひとつの向こう側から、大いなる愛そのものがずっと呼びかけていたのです。

 And each has been surmounted by the power of the attraction of what lies beyond.
 だから、そんな障害はすべて、その障害の向こう側にある魅力によってすでに克服されているのです。

 Your wanting fear seemed to be holding them in place.
 あなたが恐れを望むことで、それらの障害がその場所に保たれているように見えていました。

 Yet when you heard the Voice of Love beyond them, you answered and they disappeared.
 しかし、あなたがそれらの障害の向こう側にある大いなる愛の声を聞いたとき、あなたは答えたので、それらの障害は消え去ったのです。

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6. And now you stand in terror before what you swore never to look upon.
 そして今、あなたは自分がかつて絶対に見ないと誓ったものを前にして、恐れおののきながら立ちすくんでいます。

 Your eyes look down, remembering your promise to your "friends. "
 自分の「味方」との約束を思い出して、あなたは俯いてじっと下を見ています。

 The "loveliness" of sin, the delicate appeal of guilt, the "holy" waxen image of death, and the fear of vengeance of the ego you swore in blood not to desert, all rise and bid you not to raise your eyes.
 罪の「素晴らしさ」、罪悪感の儚く訴えかける力、死の青白く「神聖な」印象、そして、あなたが決して見捨てないと血の契りを交わしたエゴから復讐されることへの恐怖、これらのすべてが心に浮かんできては、あなたに目を上げさせないようにさせます。

 For you realize that if you look on this and let the veil be lifted, they will be gone forever.
 というのは、もしあなたがこれらに目を向けてヴェールが剥がれるようにさせるなら、それらは永遠に消え去ってしまうことにあなたは感づいているからです。

 All of your "friends," your "protectors" and your "home" will vanish.
 あなたの「味方」も「守護者」も「家」もすべて消え去るでしょう。

 Nothing that you remember now will you remember.
 あなたが今覚えていることを、あなたは何ひとつ思い出さなくなるでしょう。



7. It seems to you the world will utterly abandon you if you but raise your eyes.
 あなたは、もし自分が目を上げようものならそれだけで、自分はこの世界から完全に捨て去られてしまうはずだと思っています。

 Yet all that will occur is you will leave the world forever.
 しかし、実際に起こるのは、あなたが永遠にこの世界をあとにして立ち去ることだけです。

 This is the re-establishment of your will.
 これは、あなたが決意を新たにすることです。

 Look upon it, open-eyed, and you will nevermore believe that you are at the mercy of things beyond you, forces you cannot control, and thoughts that come to you against your will.
 目を見開いて、障害の向こう側にあるものをしっかり見つめてください。そうすれば、あなたはもう二度と自分のことを、あなたのコントロールの及ばない力や、あなたの意志に逆らって生じてくる思いなどのあなたを超越する物事によって、なされるがままに翻弄される存在だとは信じなくなるでしょう。

 It is your will to look on this.
 ヴェールの向こう側にある大いなる愛を目にすることこそ、あなたの意志なのです。

 No mad desire, no trivial impulse to forget again, no stab of fear nor the cold sweat of seeming death can stand against your will.
 どのような狂気の願望も、再び忘れたいというどんなかすかな衝動も、見せかけの死に対する刺すような恐怖や冷や汗も、あなたの意志に抗うことはできません。

 For what attracts you from beyond the veil is also deep within you, unseparated from it and completely one.
 なぜなら、ヴェールの向こう側からあなたの心を惹きつける愛は、そこから分離することなく完全にひとつのまま、あなたの心の奥底にも存在しているからです。


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