T29-9 赦しの夢


あなたが出会う最悪の敵は、いつもあなた自身であるだろう。



Friedrich Nietzsche
ニーチェ(「ツァラトゥストラはかく語りき」より)

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No one is free who has not obtained the empire of himself.
自分自身という王国の統治権を獲得していない者は、誰も自由になれない。

No man is free who cannot command himself.
誰であれ、自分自身を支配して意のままに命ずることができないような者は自由ではない。



Pythagoras
ピタゴラス




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今回はテキスト第二十九章から「赦しの夢」という一節をご紹介します。


偶像崇拝

偶像の奴隷になるのは簡単です。

誰もが自ら望んで奴隷になります。

自分以外のものに自分の運命を左右したり、自分に影響を及ぼす力があると信じることは偶像崇拝です。

祟りがあると信じて浄罪のためにお布施をすること、健康食品の健康効果を信じること、運勢がよくなることを期待して風水を信じること、引き寄せの法則を実践してみることといったわかりやすい偶像崇拝だけでなく、エゴに従うかぎり、この世界で生きるプロセスでなすことすべてが偶像崇拝です。




この世界ではだれもが偶像の奴隷

この世界で偶像の奴隷ではない人はいません。

というのも、夢の中の登場人物(や小説や映画等の物語世界の登場人物)の中で、作りもので幻であるキャラクターとより本物度の高いキャラクターとが、真実性に濃淡さをもって存在するわけではなく、夢である世界の中の登場人物はすべて偶像であり、したがって、私たちが自分は人間だと思っているかぎり、私たちは、紛れもなく偶像崇拝していることになるからです。

自他分離の裁きの夢を見て恐怖の夢の世界で暮らすかぎり、私たちには、偶像としての登場人物しか見えず、世界は憎しみと攻撃に満ちた恐怖の場所のままです。


裁かずに赦すことで偶像から力を取り戻す

しかし、世界がこのような場所であるのは、裁きによる投影の結果なのだから、私たちは裁かないで赦すことによって、自分で偶像というおもちゃに与えていた力を取り戻し、世界を天国を正しく反映した影のない光の世界、真の世界に変えることができます。

そのとき、登場人物たちは、自分勝手な期待を背負わせて裏切られたと文句をつけるための偶像としてではなく、自分と愛でひとつに結ばれた神の子としての兄弟としての真の姿を見せてくれるでしょう。




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テキスト第二十九章

IX. The Forgiving Dream
九 赦しの夢



1. The slave of idols is a willing slave.
 偶像たちの奴隷は、自ら進んで奴隷になっています。

 For willing he must be to let himself bow down in worship to what has no life, and seek for power in the powerless.
 というのは、生命を持たないようなものに対して跪いて礼拝したり、力を持たないものに力を求めるようなことを自分自身にさせるからには、彼はよほどそうしたいと望んでいるに違いないからです。

 What happened to the holy Son of God that this could be his wish; to let himself fall lower than the stones upon the ground, and look to idols that they raise him up?
 このような、自分自身を地面に転がる石くれよりも貶めて平身低頭し、偶像たちに自分を立ち上がらせてもらうことを期待するようなことを自らの願いにできるとは、いったい聖なる神の子に何が起こったのでしょうか。

 Hear, then, your story in the dream you made, and ask yourself if it be not the truth that you believe that it is not a dream.
 そこで、あなたの作り出した夢の中で語られるあなたの人生物語に耳を傾けて、あなたは自分の人生は夢ではないと信じているけれど、実はそれが真実でなかったとしらと、自問してみるがよいでしょう。



2. A dream of judgment came into the mind that God created perfect as Himself.
 裁きを下すという夢が、神が神自身と同じように完全なるものとして創造した心の中に入りこみました。

 And in that dream was Heaven changed to hell, and God made enemy unto His Son.
 そして、そんな夢の中で、天国は地獄に変えられ、神はわが子にとっての敵にされてしまいました。

 How can God's Son awaken from the dream?
 どのようにすれば、神の子はこんな夢から目を覚ますことができるでしょうか。

 It is a dream of judgment.
 それは裁きの夢です。

 So must he judge not, and he will waken.
 だから、彼が裁こうとさえしなければ、彼の目は覚めるはずです。

 For the dream will seem to last while he is part of it.
 というのは、その夢が続いているように見えるのは、彼がその夢の一部になっている間だけだからです。

 Judge not, for he who judges will have need of idols, which will hold the judgment off from resting on himself.
 裁いてはなりません。というのも、裁きを下す者は、彼自身に裁きが下されるのを防いでくれる偶像を必要とするようになるからです。

 Nor can he know the Self he has condemned.
 それだけでなく、裁く者には、自分が有罪判決を下した大いなる自己を知ることができなくなるからです。

 Judge not, because you make yourself a part of evil dreams, where idols are your "true" identity, and your salvation from the judgment laid in terror and in guilt upon yourself.
 裁いてはなりません。なぜなら、裁くなら、あなたは自分自身を不幸な夢の一部にしてしまうからです。その不幸な夢の中では、偶像があなたの「真の」アイデンティティーとなり、偶像こそが恐怖と罪悪感の中で自分自身に言い渡した審判からあなたを救済するものとなっています。

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3. All figures in the dream are idols, made to save you from the dream.
 夢の中のすべての登場人物たちは偶像であり、あなたをその夢から救い出そうとして作り出されたものです。

 Yet they are part of what they have been made to save you from.
 しかし、当の彼ら自身、あなたをそこから救い出すために彼らが作り出されたその夢自体の一部なのです。

 Thus does an idol keep the dream alive and terrible , for who could wish for one unless he were in terror and despair?
 したがって、偶像は夢を存続させ、恐ろしいものとして保ち続けることになります。というのは、恐怖と絶望の中にいるのでなければ、偶像を望むことなど誰にもできないからです。

 And this the idol represents, and so its worship is the worship of despair and terror, and the dream from which they come.
 そして、偶像はまさにあなたが恐怖と絶望の中にいることを象徴しています。だから、偶像を崇拝することは、絶望や恐怖を崇拝することであり、そして、絶望と恐怖が生まれてくる夢そのものを崇拝することです。

 Judgment is an injustice to God's Son, and it is justice that who judges him will not escape the penalty he laid upon himself within the dream he made.
 裁きを下すことは、神の子を不当に扱う不正義です。だから、神の子を裁くという不正を働く者が、自分の作り出した夢の中で、自分自身に科した罰を免れないことが正義となります。

 God knows of justice, not of penalty.
 神は正義を知っていても、処罰は神の知るところではありません。

 But in the dream of judgment you attack and are condemned; and wish to be the slave of idols, which are interposed between your judgment and the penalty it brings.
 しかし、裁きの夢の中では、あなたは攻撃し、そして、非難され、あなたの下す審判とそれがもたらす処罰との間に置かれた偶像の奴隷になることを願うようになります。



4. There can be no salvation in the dream as you are dreaming it.
 あなたが夢見ている通りの夢の中には、救いはありえません。

 For idols must be part of it, to save you from what you believe you have accomplished, and have done to make you sinful and put out the light within you.
 というのは、あなたが自分で成し遂げたと信じていること、つまり、あなたが自分を罪深い存在に作り変えて、自分の内なる光を消してしまったと信じこんでいる夢からあなたを救い出そうにも、あなたが頼みにする偶像たちはその夢の一部であるに違いないからです。

 Little child, the light is there.
 幼子よ、あなたの内なる光は消えていません。

 You do but dream, and idols are the toys you dream you play with.
 あなたはただ夢を見ているだけです。だから、偶像というのは、あなたがそれで遊ぶことを夢見ているおもちゃなのです。

 Who has need of toys but children?
 子供たち以外にいったい誰がおもちゃを必要とするでしょうか。

 They pretend they rule the world, and give their toys the power to move about, and talk and think and feel and speak for them.
 子供たちは自分が世界を支配しているつもりになって、自分のおもちゃに動き回る力を与え、自分に代わって話したり、考えたり、感じたり、喋ったりする力を与えます。

 Yet everything their toys appear to do is in the minds of those who play with them.
 しかし、彼らのおもちゃがしているように見えることはすべて、それらのおもちゃで遊んでいる子供たちの心の中にあるものです。

 But they are eager to forget that they made up the dream in which their toys are real, nor recognize their wishes are their own.
 しかし、子供たちは、自分のおもちゃたちが本物になっている夢を作り出したのが自分だということを必死になって忘れようとするし、自分のおもちゃたちの願い事が自分自身のものだと認めようとはしません。

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5. Nightmares are childish dreams.
 さまざまな悪夢は、子供じみた夢です。

 The toys have turned against the child who thought he made them real.
 おもちゃを本物にできたと思いこんだ子供に、そのおもちゃが歯向かってきたのです。

 Yet can a dream attack?
 しかし、夢が攻撃できるでしょうか。

 Or can a toy grow large and dangerous and fierce and wild?
 それに、おもちゃが大きくなって危険なものになったり、獰猛で手に負えなくなったりしうるでしょうか。

 This does the child believe, because he fears his thoughts and gives them to the toys instead.
 たしかにその子はそう信じるはずです。なぜなら、その子は自分の思いつきを恐れて、その恐ろしい思いを身代わりにしたおもちゃに与えてしまうからです。

 And their reality becomes his own, because they seem to save him from his thoughts.
 そうして、おもちゃが実在性を持つことが子供自身にとっての現実になるわけです。なぜなら、自分の現実であるおもちゃこそが自分の思いから自分を救ってくれるように思えるからです。

 Yet do they keep his thoughts alive and real, but seen outside himself, where they can turn against him for his treachery to them.
 しかし、おもちゃはたしかに子供の思いを生かし続けて本物として保ちはしますが、その思いを子供自身の外側に見えるようにするだけです。子供自身の外側であれば、その子が裏切ったときに、おもちゃはその子に反抗できるようになるからです。

 He thinks he needs them that he may escape his thoughts, because he thinks the thoughts are real.
 その子は、自分の思いから逃れるには、おもちゃが必要だと思っています。なぜなら、その子は、それらの思いは実在すると思っているからです。

 And so he makes of anything a toy, to make his world remain outside himself, and play that he is but a part of it.
 だから、その子は、自分の世界を自分自身の外側に留まらせて、自分がその世界の一部でしかないふりをして遊ぶために、何でもおもちゃにしてしまうのです。



6. There is a time when childhood should be passed and gone forever.
 幼年期を過ぎて永遠に過ぎ去らせるべき時期があります。

 Seek not to retain the toys of children.
 子供のおもちゃをいつまでも取っておこうとしてはなりません。

 Put them all away, for you have need of them no more.
 そんなものは、全部片づけてしまいなさい。というのは、もうあなたにそんなおもちゃは必要ないからです。

 The dream of judgment is a children's game, in which the child becomes the father, powerful, but with the little wisdom of a child.
 裁きの夢は、子供のわずかな知恵しか持ち合わせないまま、力強い父親になったふりをする子供たちのごっこ遊びです。

 What hurts him is destroyed; what helps him, blessed.
 その子の気分を害するものは滅ぼされ、彼の気分を良くさせるものは祝福されます。

 Except he judges this as does a child, who does not know what hurts and what will heal.
 ただし、彼はこの自分にとっての利害を、子供がするように、何が傷つけるもので、何が癒してくれるものかもわからないままに判断します。

 And bad things seem to happen, and he is afraid of all the chaos in a world he thinks is governed by the laws he made.
 だから、悪いことが起こるように思えると、彼は、自分が作り出した法則が支配するものと思いこんでいる世界におけるあらゆる混乱を恐れることになります。

 Yet is the real world unaffected by the world he thinks is real.
 ところが、真の世界は、その子が本物だと思っている世界から影響を受けることはありません。

 Nor have its laws been changed because he does not understand.
 それに、その子が理解しないからといって、真の世界の法が変わってしまったことなどありません。

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7. The real world still is but a dream.
 真の世界ですら、ひとつの夢でしかありません。

 Except the figures have been changed.
 ただし、その世界の中の登場人物たちは変わっています。

 They are not seen as idols which betray.
 彼らは裏切るような偶像としては見られません。

 It is a dream in which no one is used to substitute for something else, nor interposed between the thoughts the mind conceives and what it sees.
 その夢の中では、誰もほかの何かの代用として用いられることはなく、心が抱く思いと心が見るものとの間に何かが介在することもありません。

 No one is used for something he is not, for childish things have all been put away.
 誰ひとり、自分ではない何かの代わりに用いられることはありません。というのも、子供じみた物事はもうすべて片付けられているからです。

 And what was once a dream of judgment now has changed into a dream where all is joy, because that is the purpose that it has.
 そして、かつては裁きを下す夢であったものが、いまや、すべてが喜びである夢へと変わっています。なぜなら、歓喜こそが真の世界という夢の目的だからです。

 Only forgiving dreams can enter here, for time is almost over.
 ただ赦しの夢だけが、ここに入ってくることができます。というのも、時間はほとんど終わりかけているからです。

 And the forms that enter in the dream are now perceived as brothers, not in judgment, but in love.
 そして、この夢に入ってくる人影は、今では、裁くことによってではなく、愛によって兄弟たちとして知覚されるのです。



8. Forgiving dreams have little need to last.
 赦しの夢を長引かせる必要はほとんどありません。

 They are not made to separate the mind from what it thinks.
 赦しの夢は、心が思うものから心を分離するために作られるものではありません。

 They do not seek to prove the dream is being dreamed by someone else.
 赦しの夢は、その夢がほかの誰かによって夢見られていることを証明しようとはしません。

 And in these dreams a melody is heard that everyone remembers, though he has not heard it since before all time began.
 そして、これらの赦しの夢の中では、時間が始まって以来耳にすることがなかったけれど、誰もが覚えているメロディーが聞こえます。

 Forgiveness, once complete, brings timelessness so close the song of Heaven can be heard, not with the ears, but with the holiness that never left the altar that abides forever deep within the Son of God.
 いったん赦しが完了しさえすれば、赦しによって時間のない状態が本当に近くにもたらされるので、天国の歌が聞こえるようになります。それは耳で聞くのではなく、神の子の心の奥深くに永遠に留まっている祭壇を一度も離れたことのない神聖さで聞く歌です。

 And when he hears this song again, he knows he never heard it not.
 そして、彼が再びこの歌を聞けば、彼には自分がその歌を聞いていなかったことなど一度もなかったことがわかります。

 And where is time, when dreams of judgment have been put away?
 裁きの夢を捨て去ったとき、いったいどこに時間があるというのでしょうか。

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9. Whenever you feel fear in any form,—and you are fearful if you do not feel a deep content, a certainty of help, a calm assurance Heaven goes with you,—be sure you made an idol, and believe it will betray you.
 もしあなたが深い満足感や、助けてもらえるという確信や、天国が自分とともにあるという落ち着いた確信を感じられないとしたら、きっとあなたは恐れを抱いているのです。どんな形であれ、あなたが恐れを感じるときはいつでも、自分が偶像を作り出して、その偶像がきっと自分を裏切るはずだと信じているのだと確信してよいでしょう。

 For beneath your hope that it will save you lie the guilt and pain of self-betrayal and uncertainty, so deep and bitter that the dream cannot conceal completely all your sense of doom.
 なぜなら、その偶像が自分を救ってくれるはずだというあなたの希望の裏には、自分自身に背いているという思いからくる罪悪感や救われるという希望に確信が持てないことからくる苦痛が潜んでおり、それらがあまりに深刻で痛烈なものなので、偶像に救ってもらえるという夢も、あなたが抱く悲運の予感をすべて完全に隠しきることはできないからです。

 Your self-betrayal must result in fear, for fear is judgment, leading surely to the frantic search for idols and for death.
 自分に背いているというあなたの思いは、必ず恐怖心を抱く結果をもたらします。というのは、恐れることは裁きを下すことであり、確実に偶像や死を求めての死に物狂いの探索へと導くものだからです。



10. Forgiving dreams remind you that you live in safety and have not attacked yourself.
 赦しの夢は、あなたが安全に生きており、自分自身を攻撃したことなどないと、あなたに気づかせてくれます。

 So do your childish terrors melt away, and dreams become a sign that you have made a new beginning, not another try to worship idols and to keep attack.
 したがって、赦しの夢では、あなたの子供じみた強い恐怖心も溶け去り、夢は、あなたが偶像を崇拝して攻撃を続けようともう一度試みることなく、新たな出発をしたことを示す印となります。

 Forgiving dreams are kind to everyone who figures in the dream.
 赦しの夢は、夢の中に登場するすべての者にとって親切なものです。

 And so they bring the dreamer full release from dreams of fear.
 だから、赦しの夢は、その夢を夢見ている者に恐ろしい夢からの完全な解放をもたらしてくれます。

 He does not fear his judgment for he has judged no one, nor has sought to be released through judgment from what judgment must impose.
 彼は自分が裁かれることを恐れません。というのは、彼は誰にも裁きを下したことはないし、また、彼は、裁きが課すものから裁きによって解放されようともしなかったからです。

 And all the while he is remembering what he forgot, when judgment seemed to be the way to save him from its penalty.
 そして、赦しの夢が続く間ずっと、裁くことが裁きによる処罰から自分を救う方法であるように思えていたときには忘れてしまっていたことを彼は思い出すのです。


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