C2 エゴ ー 奇跡

2013年09月07日
用語解説 0

もしあなたが、エゴの感覚はどうやったら乗り越えられるのかと尋ねるなら、私は、なぜそうしたいのかと尋ねる。もしあなたが、自己超越という「より高位の精神的地位」にあれば自分のエゴはもっと気分がよくなるだろうから、といった誠実な答え方をしてくれるなら、あなたはやがて、エゴとしての自分はまがいものだということを悟るだろう。あなたには、まるで自分が玉ねぎのように思えるだろう。皮また皮、逃げ口上に次ぐ逃げ口上で、最後までむいても中心には何もない。だが、このこと――何もないところを取り巻く防御壁、それを取り巻く防御壁、それを取り巻く・・・・・つまりエゴとはまさしくまがいものであるということを発見することこそが、要点のすべてなのだ。それを取り除きたいと思うことすら不可能だし、思う必要がないのである。
 このことを理解すれば、エゴとはまさにエゴではないふりをしているものなのだ、ということがわかってくる。それは、人格の独立した中心であるどころか、社会的権威によって子供のころから植え付けられた、またおそらくは遺伝的特性をも伴った、自動的な機構なのだ。

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アラン・ワッツ




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用語解説から、「エゴー奇跡」をご紹介します。


エゴを定義する必要はないし、定義しようもない

エゴは狂気の産物で幻想でしかない無なので、定義する必要もなければ、定義しようもないということが語られます。

エゴは、すべての幻想と同じく、実在の不在に名前をつけた影でしかありません。

ひとつの実在である愛をいろんな側面から見て、それを生命、平安、真理、知識等と呼びますが、主体的な側面からみると、実在するのは一なる霊である大いなる自己となります。

この大いなる自己の不在によって生じた影である自分が何者かわからない状態がエゴです。

つまり、自分が誰かわからないという疑念、確信の欠如に名前をつけたものにすぎません。


だから、エゴには多様なバリエーションはありえても、疑いから悪意という範囲で影が濃くなったり薄くなったりする限界を踏み越えられません。つまり、何も信じることができない、確信など得られようがないということです。




エゴという影が変節しうる範囲

「The ego is therefore capable of suspiciousness at best and viciousness at worst.
 したがって、エゴは、良くてせいぜい疑い深く、最悪の場合には、悪意に満ちたものになりえます。

 That is its range.
 これがエゴが変化しうる範囲です。

 It cannot exceed it because of its uncertainty.
 エゴは不安定であるがゆえに、エゴにはこの範囲を越えることができません。

 And it can never go beyond it because it can never be certain.
 そして、エゴは決して確信を持つことができないので、絶対にこの範囲を踏み越えることができません。」(T9-7 ふたつの評価 3.)


エゴの対極の奇跡からエゴを考える

このようにエゴは、幻、影なので、積極的に定義しようのないものですが、エゴとは対極にある奇跡からエゴとは何だったのか見極めることができます。

というのも、奇跡とは、愛によって自他の分離が錯覚であることへの気づきが心を反映する世界に現れる現象だからです。

「10. The miracle forgives; the ego damns.
 奇跡とは赦すものであり、エゴとは罰するものです。

 Neither need be defined except by this.
 奇跡もエゴも、これ以外に定義する必要はありません。

 Yet could a definition be more sure, or more in line with what salvation is?
 それにしても、これにまして正確で、これ以上救済の何たるかに調和する定義がありうるでしょうか。」


エゴはありのままの自己を否定しよりよい自己になろうという承認欲求

エゴは、自分が何者かわからず確信が持てない状態を意味するので、つねに何者かになろう、価値ある者になりたい、賞賛を浴びたい、自分を認めてほしいという承認欲求となります。

ありのままの自分自身であるということができません。


エゴの権化となったバスチアンの軌跡を辿れば、エゴという狂気がよく理解できる

はてしない物語の後半で、救い主、勇者、賢者、覇者になろうと狂ったように欲望に突き動かされたバスチアンはエゴの権化となっていました。

バスチアンがありのままの現実の自分の記憶を捨てて、現実の記憶と引き換えになりたい自己像になりきって、どんどん廃人になっていったように、私たちも、エゴの欲望を追い求めて満たせば満たすほど、本当の自分が神の子であるという記憶は遠のいてゆくばかりです。




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The Ego - The Miracle
エゴ - 奇跡



1. Illusions will not last.
 幻想は永続しません。

 Their death is sure and this alone is certain in their world.
 幻想が消滅するのは確実であり、幻想の世界で確かなことはただこれだけです。

 It is the ego's world because of this.
 この理由から、幻想の世界はエゴの世界なのです。

 What is the ego?
 エゴとは何なのでしょうか。

 But a dream of what you really are.
 エゴは、それが本当のあなただという夢でしかありません。

 A thought you are apart from your Creator and a wish to be what He created not.
 エゴは、あなたが自らの創造主から分離しているという思考であり、創造主が創造しなかったものになりたいという願望です。

 It is a thing of madness, not reality at all.
 エゴは、狂気の産物であり、まったく実在しないものです。

 A name for namelessness is all it is.
 エゴは、名付けようのないものに付されたひとつの名前でしかありません。

 A symbol of impossibility; a choice for options that do not exist.
 エゴは、ありえないもののシンボルであり、存在しない選択肢を選ぶことです。

 We name it but to help us understand that it is nothing but an ancient thought that what is made has immortality.
 私たちがそれに名をつけるのは、エゴが単に、作り出されたものは不滅性を持つという古来の想念でしかないことを私たちが理解しやすくするためでしかありません。

 But what could come of this except a dream which, like all dreams, can only end in death?
 しかし、こんな想念から生じうるのは、すべての夢と同じように、死によってしか終わらせることのできない夢だけではないでしょうか。



2. What is the ego?
 エゴとは何なのでしょうか。

 Nothingness, but in a form that seems like something.
 無です。無がただ有であるかのように見える形をとっただけのものです。

 In a world of form the ego cannot be denied for it alone seems real.
 形のある世界においては、エゴだけが実在するように見えるので、エゴを否定することはできません。

 Yet could God's Son as He created him abide in form or in a world of form?
 しかし、神に創造されたままの神の子が形の中に留まったり、形ある世界の中に留まったままでいることなどできるでしょうか。

 Who asks you to define the ego and explain how it arose can be but he who thinks it real, and seeks by definition to ensure that its illusive nature is concealed behind the words that seem to make it so.
 あなたにエゴを定義して、どのようにエゴが生じたのか説明するよう求めるのは、エゴが実在すると思っている者だけです。そして、その者は、定義することによって、エゴを実在するかのように思わせる言葉の背後に、エゴの実体のない本質を隠したままにしようとしているのです。



3. There is no definition for a lie that serves to make it true.
 偽りを真実に変えられるような偽りの定義などありません。

 Nor can there be a truth that lies conceal effectively.
 偽りが隠し通せるような真理などありえません。

 The ego's unreality is not denied by words nor is its meaning clear because its nature seems to have a form.
 言葉によってエゴの実在性を否認できるわけではありません。また、エゴが本質的に形を持っているように見えるからといって、エゴの意味が明白になるわけでもありません。

 Who can define the undefinable?
 定義しようのないものを誰が定義できるというのでしょうか。

 And yet there is an answer even here.
 それでも、ここにすら、答えはあるのです。



4. We cannot really make a definition for what the ego is, but we can say what it is not.
 私たちには、エゴが何であるか本当に定義することができません。しかし、私たちは、エゴではないものについてなら語ることができます。

 And this is shown to us with perfect clarity.
 そして、エゴではないものは、私たちに完璧な明瞭さをもって示されています。

 It is from this that we deduce all that the ego is.
 このエゴではないものから、私たちはエゴとはいったい何なのか演繹することができます。

 Look at its opposite and you can see the only answer that is meaningful.
 このエゴの対極を見てみてください。そうすれば、あなたは意味のある唯一の答えを見ることができます。



5. The ego's opposite in every way,–in origin, effect and consequence–we call a miracle.
 その起源、影響、そして、結果のあらゆる面でエゴの対極にあるものを、私たちは奇跡と呼びます。

 And here we find all that is not the ego in this world.
 そして、ここに私たちは、この世界の中でエゴではない唯一のものを見出します。

 Here is the ego's opposite and here alone we look on what the ego was, for here we see all that it seemed to do, and cause and its effects must still be one.
 ここにこそ、エゴの対極があり、ここだけにエゴとは何であったのか私たちは見ることになります。というのも、ここで私たちは、エゴが行っているように思えたすべてを見て、原因とその結果は依然としてひとつのものであるに違いないとわかるからです。



6. Where there was darkness now we see the light.
 闇があった場所に、今、私たちは光を見ます。

 What is the ego?
 エゴとは何なのでしょうか。

 What the darkness was.
 かつて闇だったものです。

 Where is the ego?
 エゴはどこにあるのでしょうか。

 Where the darkness was.
 かつて闇があったところです。

 What is it now and where can it be found?
 今、闇は、何であり、どこに見出せるのでしょうか。

 Nothing and nowhere.
 闇は無であって、どこにもありません。

 Now the light has come: Its opposite has gone without a trace.
 いまや光がやってきたので、光の対極は跡形もなく去ってしまったのです。

 Where evil was there now is holiness.
 邪悪さがあった場所に、今、神聖さがあります。

 What is the ego?
 エゴとは何なのでしょうか。

 What the evil was.
 かつて邪悪であったものです。

 Where is the ego?
 エゴはどこにあるのでしょうか。

 In an evil dream that but seemed real while you were dreaming it.
 あなたがそれを夢見ていた間本物に見えていただけの邪悪な夢の中です。

 Where there was crucifixion stands God's Son.
 かつて十字架があった場所に、神の子が立っています。

 What is the ego?
 エゴとは何なのでしょうか。

 Who has need to ask?
 誰が尋ねる必要があるのでしょうか。

 Where is the ego?
 エゴはどこにあるのでしょうか。

 Who has need to seek for an illusion now that dreams are gone?
 夢の去った今、誰が幻想を求める必要があるというのでしょうか。



7. What is a miracle?
 奇跡とは何なのでしょうか。

 A dream as well.
 エゴと同じように奇跡もひとつの夢です。

 But look at all the aspects of this dream and you will never question any more.
 しかし、この奇跡という夢のすべての側面を見てください。そうすれば、あなたは二度とそれ以上質問しようとは思わなくなるでしょう。

 Look at the kindly world you see extend before you as you walk in gentleness.
 優しさの中を歩みながら、自分の目の前に広がる思いやりに溢れた世界を見てください。

 Look at the helpers all along the way you travel, happy in the certainty of Heaven and the surety of peace.
 あなたの旅する道に同行してくれる救い手たちが、天国を確信し、確かな平安に包まれて幸せでいる様子を見てください。

 And look an instant, too, on what you left behind at last and finally passed by.
 そして、ついに自分がようやく通り過ぎてあとにしたものにも、一瞬だけ目を向けてください。



8. This was the ego–all the cruel hate, the need for vengeance and the cries of pain, the fear of dying and the urge to kill, the brotherliness illusion and the self that seemed alone in all the universe.
 すべての冷酷な憎しみ、復讐の要求、そして、痛みの叫び声、死の恐怖、そして、殺したいという衝動、同胞愛などないという錯覚、そして、宇宙全体の中に孤立しているように見える小さな自己、こんなものがエゴだったのです。


 This terrible mistake about yourself the miracle corrects as gently as a loving mother sings her child to rest.
 この自分自身についてのとてつもない思い違いを、奇跡は、愛情深い母親が子守唄でわが子を休ませてあげるように、優しく修正してくれます。

 Is not a song like this what you would hear?
 あなたが聞きたかったのはこんな歌声ではないでしょうか。

 Would it not answer all you thought to ask, and even make the question meaningless?
 この歌声は、あなたが尋ねたかったすべての思いに答えを与えるだけでなく、そんな質問を無意味なものにさえするのではないでしょうか。



9. Your questions have no answer, being made to still God's Voice, which asks of everyone one question only: "Are you ready yet to help Me save the world?"
 エゴが何であるのかという、あなたの質問には答えがありません。なぜなら、あなたの質問は、神の大いなる声を沈黙させようとして発せられていたものだからです。その神の声は、すべての者に「あなたはもう私が世界を救うのを手助けする用意はできていますか」と、ただひとつの質問だけを尋ねています。

 Ask this instead of what the ego is, and you will see a sudden brightness cover up the world the ego made.
 エゴが何であるのか尋ねる代わりに、この質問を尋ねてください。そうすれば、あなたは、突如として光輝がエゴの作り出した世界を覆い尽くすのを目にするでしょう。

 No miracle is now withheld from anyone.
 いまや、誰にも奇跡が与えずにおかれることはありません。

 The world is saved from what you thought it was.
 世界は、それが世界だとあなたが思いこんでいたものから救われたのです。

 And what it is, is wholly uncondemned and wholly pure.
 そして、ありのままの世界は、まったく非難の余地のない完全に清らかなものなのです。



10. The miracle forgives; the ego damns.
 奇跡とは赦すものであり、エゴとは罰するものです。

 Neither need be defined except by this.
 奇跡もエゴも、これ以外に定義する必要はありません。

 Yet could a definition be more sure, or more in line with what salvation is?
 それにしても、これにまして正確で、これ以上救済の何たるかに調和する定義がありうるでしょうか。

 Problem and answer lie together here, and having met at last the choice is clear.
 問題と答えが、ここに一緒にあります。ようやく問題と答えが一緒になったのだから、どちらを選択するかは明白です。

 Who chooses hell when it is recognized?
 それが地獄だと気づいたとき、誰が地獄を選ぼうとするでしょうか。

 And who would not go on a little while when it is given him to understand the way is short and Heaven is his goal?
 そして、天国が自分の目的地であり、そこまでの道のりが短いと理解させてもらえたなら、誰でも、もう少しだけ進んでみようという気になるのではないでしょうか。


次

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It’s not how much we give, but how much love we put into giving. – Mother Teresa

 松山 健 Matsuyama Ken
この記事を書いた人:  松山 健 Matsuyama Ken

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